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夏 セミに出会う -2-


日暮れをぼんやり眺めながら、夕飯を摂る。


もちろん最初は、ビールで乾杯。
サラダと鉄板焼き肉とじゃがバター。それからはんごうご飯。
いつもは食が細い私が、ステーキ1ポンドを平らげる。

のんびり夕飯。

でも〜。

実は虫との戦いで、
アブが去ると、次は小さな羽虫。
ようやく居なくなったかと思うと、最後に羽アリがやって来た。

6時から6時半は、アブの時間。
7時から7時半は、小さな羽虫の時間。
8時からは羽蟻の時間と、ちゃんと時間割がされているように、
交代で虫たちの集団がやって来た。
ちゃんと活動時間が守られているのに驚いた。

虫でさえ、ルールがあって、ルールで生きてるらしい。


いつもなら、食料に虫など付いたら大騒ぎなのに、
虫の集団にかまっていたら、ご飯どころではない。
「焼いちゃえば、大丈夫〜。」
と、勝手におおらかにさせられる。

湖の脇だから、しかも蒸し暑い。
キンキンビールを飲むのには最高だ。

そのうち周囲では花火が始まって、さながら小さな花火大会だ。
どうしたって、子供の頃の花火の話になる。
必ずロケット花火の撃ち合いをした話し。
今は「そんなの危険でしょ…。」としか思えない。
子供の頃って、危険なことが好きなのだ。
大きくなると、安全な道ばかり探すようになるのに。



そして、
焚き火。

…。
…。…。
…。…。…。

暑い。

じゃがバター作って、マシュマロ焼きたいけど…。

暑い。

でも、
焚き火で沸かしたお湯は美味しい。
ビールをやめて、私は、コーヒーを飲む。

暑い。

マシュマロは、お腹いっぱいで入らない。

夕飯の片付けの後でも、お腹いっぱいのままだ。
片付けと言っても、
鉄板とトングを洗えば終わりだったけど。
家にいる時とは大違いだ。
洗い物が少ないだけで、こんなに心のゆとりが出来るとは。


対岸の焚き火も眺める。

湖畔に沿って、それぞれの焚き火が並ぶ。
焚き火の色って、安心する。
真っ暗な闇に焚き火のオレンジ。
太鼓の昔から、この火は人間をホッとさせて来たんだろうな…。
遺伝子に組み込まれた暖かい色なのだろう…。

そんな事を考えている私とは対象に、
相棒は、
「ここ電波圏外なんだよね〜。でも、会社のスマホは圏外じゃないから、
デザリングすると使えるんだよ〜。」
と、取った写メを友達に送るのに必死だ。

アホか〜。
圏外なら圏外のままでいいじゃないか。
写メ、撮れたら充分だ。

スマホ2台を使いながら、とうとう社内メールの返信まで始め、
顧客のメール対応まで始めた。

何しに来たんじゃ…。

僕は休日。
スマホは圏外でいいじゃないか。

誰かと繋がってないと寂しいのか?…と、思ったが、
デザリングでどこまで使えるか楽しんでるようでもある。
仕事してるようで、スマホの実験が楽しいいんだろうな。

男性が無邪気でいられるのは、
女性が大地にしっかり根付いているからかもね…
と、ふと思った。

まぁ、お好きにどうぞ。

私は山の向こうでは、
音はしないのに、稲光が夜空を明るくするのを眺めた。
知らない子供と、
「キレイだね〜。」
なんて、おしゃべりしながら。

自然の夜は、
怪しげなくせに、それでも美しくたくましい。
まるで気候変動の異常事態なんて、嘘みたいだ。
…確かに、暑いけどね。
でも、夏は熱いものでしょ。







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