許せない自分のエトセトラ
昔、弟は仙台の病院に入院していた。
毎月、家族で、弟のお見舞いに行っていて、仙台は福祉都市なので車椅子で買い物に出かけたりしていた。
その日は青葉城に出かけ、昼食にお蕎麦屋さんに入る事にした。
お蕎麦屋さんの店員さんがとても親切で車椅子の弟が困らない席を選んでくれて、しかも車椅子を自ら押してくれた。
お蕎麦の注文を取る時のこと。
店員さんの顔は、火傷の様なケロイド状の皮膚をしていて、私はビックリしたけど、顔に出してはいけない、そう思った。
お蕎麦が運ばれて来て、父と弟はきれいに平らげたのだけど、私と母は蕎麦が喉を通らず、殆ど残してしまった。
その後、父に「あんなに親切にしてもらったのに、蕎麦を食べないなんて、人としてどうなんだ。」と、冷ややかに言われ、かなり自分でも、自分と言う人間こそ醜いのだと落ち込んだ。
弟が車椅子である事を、そんな風に態度に出されたら…。
きっと、悔しくて泣いてしまったかもしれない。
それは、ずっと、自分を恥じる思い出となった。
それから大人になって、同じ様に顔に火傷をしてケロイドになった女の子に出会った。
初めはビックリしたのだけれど、話しているうちに仲良くなって、ケロイドの皮膚などちっとも気にならなかった。
きっと、そう言う人もいる…と言う事を知らなかったせいもあるんじゃないかと思う。
でも、その後も、自分の心はホントは醜い…と、自分を許せず過ごしていた。
それから数年して、ウェスティー犬のロッタと暮らし出した。
ロッタは、人間の様な奴で、感情豊かで、頑固で、とにかく可愛かった。
桜が満開になり、ロッタも一緒に花見に行った時、隣のシートのお姉さんが無茶苦茶美人で、顔も美人なんだけど、もうオーラが、“美人ですよ”と煌めいていた。
離れていても、高級なバラの香りがしそうだった。
そしたらロッタたら、いつもは私がトイレに行こうと、お風呂に行こうとついて来て、散歩中もリードがなくても離れないくせに、ちゃっかりお姉さんの所に、
欽ちゃん走りみたいな歩き方で挨拶に行き、顔は
「僕って可愛いでしょ💕💕💕」
…になっている。
しかもお姉さんから
「かわいーー。」
と言われ、尻尾が飛んでくんじゃないかと思うくらいグルングルンさせて、
「そうでしょう。そうでしょう。可愛いでしょう。お姉さんも す て き💖」みたいな表情を返していた。
やべ。
色香にヤラレテル…😅
「ロッタ、おいで。」
と呼ぶと、
「しかもボク、お利口なんですよ。」
と言う顔で素直に戻って来た。
勿論、欽ちゃん走りみたいな歩き方で。
その後も、シートでご飯を食べていても
「ボクのご飯はないの?」
とか、催促を一切せず、ひたすらお姉さんに視線を送り続けた。
それを見て思ったのだ。
犬だってこんななんだから、仕方ないよね…って。
神様👏
心が愚かなのは認めますので、
多少醜くても、
お許しください。
お前は犬並みなのか?
と言われればそれまでなのですが…。
犬並みになれただけでもありがたい。
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