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クレイジーさと 3つの魂

この世界は…
狂った人達が突き動かす


そう思ってしまうのは、
私もまた、
クレイジーだからだろうか…。


「3つの魂が合わさって
一人の人を形成している」と言う。

それは、
結構実感がある。

私の中には、男と女と、
もう一人性別のないエンジェルが存在している。

性別のないエンジェルは、
その名の如く、エンジェルのまま死にたいらしい。
いわゆる、汚れを知らず、生きていたいのだ。

この世に汚れを知らず生きて行ける者など、
存在するのだろうか?

その他にもう一人、
神と交信する得体の知れない何かがいる。
もしかしたら、神のかけらなのかも知れない。
何かに導かれる時のみ、姿を表すのだ。


今の職場には、まさに導かれる様にやって来た。
こんな場所、来たくもなかったのに…。
私に何を見せたかったのか…
私に何をさせたかったのか…
それとも何かを気づかせるためか…
どれでもないのかも知れないけど。

それは、今の職場にやって来てすぐのことだった。

仕事は普通、
誰かを喜ばせたり、助けたりして
お金が発生するものだと思うのだが、
その依頼は全く違った。
明らかに、ある女性を不幸にするものだった。
不幸になると分かって、
その仕事をするなんて、
私には許せることではなかった。
直接、私が手を下すことでなくても、
私には許せない…。

でも、ざっと世間を見渡しても、
自分の職場を見渡しても、
誰かが不幸になる事なんか念頭になくて、
なんの疑問もなく、仕事なら実行している人が沢山いる。
利益のためなら、躊躇しないのが人間の様だ。

いよいよ、その日がやって来て、
私は溢れそうになる涙を必死で堪えながら直談判した。
如何に彼女が不幸になってしまうかを訴えた。
それでも、全く効果はなくて、
「私には誰かを不幸にする仕事は出来ません。」
と、必死で繰り返した。

全くの無駄だった。

私の必死さに課長が同情して、
車で私と彼女を病院まで送ってくれた。
車の中で課長が、
「仕方ないのだ。」
と、私をなだめていた。
なだめたって無理。
私の中のエンジェルはずっと泣きっぱなしだ。
私にさえ、もう、エンジェルをどうすることも出来ない。
そして、彼女も泣いていた。
「行きたくない。」って。
私は心の中で、彼女とエンジェルに、
「ごめんね。ごめんね。」
と、繰り返すしかなかった。

病院で仕事を終え、医務室に戻ると、
憔悴しきった私を同僚が切ない顔で見守った。
「彼女が帰ってきたら、アイスクリームパーティしましょう。」
と、私は同僚に行った。
「そうね。そうしましょう。
大丈夫。すぐに帰って来るから…。」
そう言って、気分を立て直すのが精一杯だった。

その日のうちに、彼女から電話がかかって来た。
声には元気がなくて、きっと泣いていたのだろう。
彼女の電話は、かかって来るたび何を言っているのか分からなくなり、
とうとう呂律も回らなくなって、私に電話が来ることもなくなってしまった。

私の中のでエンジェルはずっと泣いていた。
私はそんな職場が許せなかった。
しかも私は無力で、自分も責め始めた。

「ちゃんとやるべき事はやったじゃないか。」
私の中の男子が言う。
「でも、彼女は泣いていたし、前より悪くなってしまったし。
もうこんな職場辞めたい。」
「来たばかりの職場で、自分にそんな力があると思ってんの?
ヒーローかなんか?」
「んな、わけない。」
「だよね〜。ちょっと、冷静になれば。
現実見ないと、次の手は打てないだろ?
しかも、疲れきって。そんなじゃ頭も回らない。
今ダメでも、次の手は必ずある。」
「そうだった。次の手だ。
バックドラフト起こしたい時は、静かな炎の舌先で、
誰にも気づかれない様に事を進めなくちゃね。」
「ちゃんと、次の手が見つかれば、エンジェルだって泣き止むんだ。」
そうして、私の中の作戦会議は終わった。
エンジェルが笑っているのが、私達の心地よい生き方だ。

私は疲れ切ったけど、
それから職場では、その人をありのままに受け入れるって言うのが、
基準となった。
ちょっと変わった行動に見えても、それがその人の特徴なら問題ないって。

それからは、
エンジェルが泣き出す前に、
「ごめんね。ちょっとだけ我慢して。
ちゃんと上手くやってみせるから。」
って、先に謝って、エンジェルも許してくれる様になった。
しかも、エンジェルの許可を得ると大概のことは上手くいく。

だから、私が誰かに優しくするのは、決して誰かのためでなく、
私の中のエンジェルのためなのだ。
他人から見たら、自分のためってこと。


他のクレイジーな人達の事はよく分からないけど、
私はこんな感じ…。

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