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「とにかく暗い光で撮ってみる」 光の実験室(1)

「光の実験室」は、ポートレートを撮る上で最も重要な要素の一つである光の使い方について、重箱の隅を突くような細かいテストをしてみるコーナーです。

第一回目は、ブラインドを使った一見暗い光の使い方について。

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どのぐらいの暗さまで自分のカメラの描写が耐えられるのかを知っておくことは、光を読む上で非常に重要です。

なぜなら、暗い場所でも露出バランス(画面の中の明るい部分と暗い部分のバランス)が絶妙なスポットを見つけた時に、ここで撮ってみようという発想が浮かぶからです。

今回は日中の間接光がほのかに入る部屋のブラインドを徐々に締めていき、意図的に暗い状況を作りました。

それぞれのブラインドの位置に対して、適正露出で撮影しています。

ブラインドの変化による露出バランスの移り変わり、衣装の明るさの違いによる顔への反射光の当たり方などに着目してみてください。

衣装は顔への照り返しが少ない、黒色のトップスを着てもらっています。

まずは一番明るい、ブラインドが水平方向の状態です。顔には自然な光が当たっています。この時点ではシャッタースピードは1/350秒。手持ちで普通に撮れる数値です(今回の撮影では比較撮影のために三脚を使用しています)。

ブラインドをやや上斜めにした状態です。光がアッパーライト気味になりました。ブラインドの木の色に外光が反射して顔が赤みがかっています。

さらにブラインドを上斜めにして、窓をほぼふさいだ状態です。光はさらにアッパーライト気味に、シャッタースピードは1/45秒と手持ちギリギリの数値になりました。

最後に、ブラインドを下斜めにしてほぼ締め切ります。上から当たる光になり、顔の影の出方がブラインド上斜めの状態とは変化することに注目してください。こちらもシャッタースピードは1/45秒と手持ちギリギリの数値です。青めの外光がブラインドを通過して直接当たるため、画面全体が青みがかって写ります。

いかがでしたでしょうか。

ブラインドを締め切った状態では、目視では手持ち撮影を諦めるようなかなり暗いシチュエーションです。
ところが、露出バランスに着目することで、「一見暗くても質のいい光」で撮影するという選択肢が生まれます。
部屋をどんどん暗くしていって光を整える技を身につけると面白いですよ〜。

※同じシチュエーションでモデルに白いトップスに着替えてもらって撮影したバージョンを、玄光社「フォトテクニック デジタル7月号」の特集記事に掲載しています。白いトップスではブラインドから入った光が顔に強く反射するので、また違った写り方になります。

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[今回の撮影データ]
ライカM10-p
Apo-Summicron-M 1:2/50 ASPH.
f3.4〜4 1/45〜500秒 ISO800
WB: マニュアル RAW
model:凛

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