「震える写真」 ゆ〜じ〜語録(1)

「ゆ〜じ〜語録」のコーナーでは、福島写真研究所の研究員Yが日々耳にしている、福島裕二が撮影中などに発する謎の言語を解剖するべく、本人にインタビューしていきます。

第一回目のキーワードは「震える写真」です。

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研究員Y:福島さんはよく、「写真で震えたい」「震える写真が撮りたい」「震えるね〜」などとおっしゃっていますが、写真で震えるというのはどういうニュアンスなんでしょうか。

福島:自分が撮影中にいかにモデルに向き合って、しっかり感動して、見れて、集中してシャッターを押せているのか、そしてその想いが写真に写せているのか、っていうことですかね。何のためにシャッターを切っているのか、常に問いただすことも。そのためには、モデルが一緒にその想いに共鳴・共振していることが重要です。

研究員Y:初対面のモデルさんと、最初のシャッターを切った状態からすでに震える状態に入っていることもあるんでしょうか。

福島:やっぱり写真を撮っていく中でお互いに変容していくものなので、最初の段階では震える予感がある、という感じですかね。モデルが震えてくると、その瞬間から女性不信が始まるんです。この子が写真を通してこんな変わるんだ! って。そうしたら、そこから先はず〜っと綺麗になるので、こちらも永遠に震えられますよ。その子がそこに立っているだけでいいんだもの。

研究員Y:モデルさんの方から先に震えていることが多いんでしょうか。

福島:いや、自分が一番感動したいと思っているので、僕の方が先に撮りながら泣いていることも多いです。人が向き合って撮ることは、それ自体でありがたい行為だと思うんです。僕が撮る写真を相手が必要としてくれて、その時間を共有しているという状態は当たり前ではない。だから、撮影中に自分ができる精一杯ってなんだろうなといつも考えています。

研究員Y:その想いを写真に写すのは、かなりのテクニックが要求されそうですね。

福島:そう、想ったものが伝わるように撮るには、現場の状況や感情を具現化するための技術、勉強が必要です。だからそのための訓練や機材のリサーチは欠かせません。あと、こちら側が想ったものが相手に伝わるとは限りません。でも大前提、想わないと写らない。僕にはそれが写せているという自信があるので、「最愛の人」だと想って撮った写真に「最愛の人」というキャプションはいらないんです。

研究員Y:ちなみに撮影中、どうやったら震える状態に入っていくんでしょうか?

福島:完全なる肯定ですね。でも、肯定するということは否定することなんですよ。相手を認めるためにはまず否定がいるんです。これまであなたが撮影の時に作っていた笑顔は嘘だと、まずは否定しないといけない。「それは自分でもわかってるよね? その扉を開けてくれないと肯定できないでしょ? 今されている肯定は本当の自分を…」って。

研究員Y:ちょ、ちょっと初回からディープすぎる話に入ってきましたね! 福島さんがスピリチュアル・フォトグラファーの異名を取る所以が…。

福島:そうですね、この話題は何時間でも語れるのでおいおいしていきましょう。

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※この記事の3枚のカットは1枚だけ別日に撮ったもの、2枚は同じ日の異なる時間帯に撮ったものです。震えの度合いの違い、わかりますか?

model:エリー

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