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日記 渡航三日前

海外怖い。
いや、言い方が悪かった。
知らないのって、マジで怖い。
21歳にしてやっと直面してる。遅くね?

ここ数年、日本も世界も不安定な状況が続いている。
年上の、それこそ行きつけの散髪屋の人や小さい頃からお世話になってる近所のお医者さんと話すと、「かわいそう」とか「一番楽しい時期なのにね」とか、往々にして慰めの言葉が送られる。
そうだねって思う自分と、それでもって思う自分がいて、どっちをお出しするのも申し訳ないなって思うので、少しだけ疲れる。

大学に入ったら留学したかった。
生きてきた中で一番大きい夢、バックパッカー。市の図書館で読んだバックパッカーの本が未だに忘れられなくて、それならまずは短くてもいいから海外に行こうって、留学制度も補助もいい大学に入った。
色んな人と会ってみたかった。
会って話して、知り合いぐらいになってみたかった。
一人でいろんなところに行って、いろんな体験をしてみたかった。
綺麗だと思える記憶を色んな人に伝えられる自分になれるかもって、頑張った。
あとヘタリア沼に肩浸かってるから聖地巡礼したかった。推しはプロイセン。

でも、感染症が世界的に蔓延した。
すぐ収まるならよかったけど、そうもいかない。
病気だから仕方がない、でもこれ以上状況が悪くなることもないだろうって思い込んで、大人しく授業に出てバイトしてお金貯めて待ってみたけど、一向に良くならないし、なんならほかの問題がどんどん出てきた。

そうやって毎日を生きている間にも、なんだか怖い空気が隣にやってきているような気がしていた。すり減っていく時間に焦りも感じた。家族と話しても、暗い話題が多くなった。嫌な予感と妄想ばかりが重なり、だるま落としのように消えてもくれない。なんだかやりきれないな、が降り積もっていくような。

そうやって考えてるうち、今のうちに行っておかないともう行けなくなるかもしれないと思い始めた。
焦っていたんだと思う。でも、そうと決まれば早いもので。
大学休学して実家に戻ってきて、近くの住み込みバイトでお金を稼ぎ、いつのまにか渡航三日前だ。

前々からやりたかったことであっても、初めては怖い。
だから、死ぬ前にやりたかったことを思い浮かべて実行に移している。
今はMOZARTのチョコレートリキュールを飲んでいる。
美味しい。
この前は業務用生クリームを丸々一本食べた。というか飲んだ。
3分の2まで食べ進めたあたりから流石に苦しかったけど、やっぱり美味しかった。
なんならまた食べたくなったので、今も酒のおつまみとしてプレーンクッキーに乗せながら食べている。
親には「太るぞ」と言われた。でも、「これから死ぬかもしれないから良いんだよ」なんて言うのも野暮だし。おすすめしたら断られた。やっぱり若さ故の贅沢なんだろうな、胃の強度的に。

つい先日、オリオン座流星群が流れた。
流れ星を見つけてすぐに口から出る願いは、いつも心で思っていることだから叶うって聞いたことがある。
もし私が言うなら、「海外に行きたい」だったんだと思う。
駐車場に出て天体観測を少しだけした。
でも、流れ星は見れなかった。綺麗な夜空は見れたから、自分では満足している。

死ぬ前にやりたかったことをする。
そう思って始めて、大きな「やりたかったこと」ではない、小さな「やりたかったこと」の数がとても少ないことに気がついた。
厳密に言えば、自分一人でもできる、小さな「やりたかったこと」が少ない。
少なくとも私は、これから一人で海外に行くというのに、今更ながらに、一人ではできないことの多さに気がついた。
「うわ今めっちゃ死にたくないなぁ〜!」
そう思いながらも今、身辺整理にチョコレートリキュールを飲んでいる。
牛乳で割ると美味しくておすすめ。
比率はリキュールが1の1:2です。まじでおすすめ。

製品情報| モーツァルトMozart SUNTORY
(https://www.suntory.co.jp/wnb/mozart/products/index.html)

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