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#擬人化
パルファム・オレンジ
交互に点滅する赤いランプ。甲高い耳障りな警告音。それに負けじと声を張り上げる赤ん坊の泣き声は、雑踏の音に紛れて消えていく。
疲れていた。疲れていると自覚できないほど、深く疲れていた。乳児は朝も昼もなく泣き、母親の精神をすり減らす。目の下にくっきりと刻まれたクマは黒くどんよりと陰を落とし、ただでさえ落ち窪んだ目を更に鬼気迫る印象にさせる。
正常な思考力などとうになかった。誰も味方のいない、一
パルファム・オレガノ
午前六時にセットしたアラームが鳴る。昨日も寝るのが遅くて、朝の目覚めは最悪だ。ベッドの中でもぞりと蠢き、腕を伸ばす。枕元に置いたスマートフォンを操作してスヌーズを止める。画面の光が目に痛い。
十五分後、再びアラームが騒ぎ出した。そろそろ起きなくてはならない。思うだけで行動にはなかなか移せない。結局、実際に起き上がることができたのはそれからさらに十分後のことだった。
生欠伸を噛み殺しながら
パルファム・メラルーカ
ルカは靴下を履いた猫だ。もちろん本当に靴下を履いているわけではない。毛の模様がそういう風に見えるというだけだ。
ついでに言ってしまうと、本物の猫でもない。
ルカ、メラルーカの正体は、パルファムと呼ばれる精油から生まれた使い魔だ。仲間たちの多くは人間と同じ姿を好んで取っているが、ルカはあえて猫の姿をしている。
使い魔である以上主人はいるが、ここ数年その姿を見ていない。地球上のどこかにい
パルファム・フランキンセンス
妻が死んだ。結婚して五年。いつも新婚みたいねとからかわれるほど、仲のいい夫婦だった。
子供は二人。三歳になる双子だ。子供は三人はほしいねと話していたから、いきなり双子を授かったことに、妻は誰より喜んでいた。
ぽっかりと穴が開いたようだった。心の奥の、一番大事な場所に、埋めることのできない穴が空いている。ぴゅうぴゅうと冷たい風が吹き抜けている。凍えるようだ。温めてほしいのに、温めてくれる手