大丈夫と言った数

「大丈夫」
便利な言葉だ。今年いったい何回言っただろう。

数えられないほど言った気がする。
1日1回で365回だけど、1日５回くらい言った気がする。そうすると1825回。
365×5が暗算できなくて、電卓叩いたのは内緒。

特に今年はたくさん言った気がするから、2000回くらいかもしれない。

2000回の大丈夫。
何か曲のタイトルみたいだ。

2,000回と3桁区切りつけたくなるのは職業病か。

回数は正直あんまり重要じゃなくて。
同じ「大丈夫」という言葉でも、色々な意味で使っていて、嘘つきな私にはとても便利な言葉だ。

本当に何ともないから「大丈夫」
心配させたくないから「大丈夫」
まだ頑張れると信じたいから「大丈夫」
面倒だなと思いながら「大丈夫」

「大丈夫です！」
「あー、多分、大丈夫です」
「大丈夫だと思います」

ニュアンスで、言い回しで、何とでも使える。
便利すぎるから、本当に困っていたり体調の悪い人には「大丈夫ですか？」って聞いたらいけないというし、別の言葉に言い換えましょうなんて言われるけれど。

この曖昧な「大丈夫」しか言えなかった時がある。
今年の中で、1番覚えている。

ごめんねと泣くあなたに、ひたすら繰り返した「大丈夫」の言葉。
根拠なんて何もないのに。
溢れる不安を見ないことにして、ただただ、あなたを安心させたくて。同時に、自分自身にも大丈夫だと暗示をかけたくて。

それ以外の言葉が見つからなかった。

何を言っても、どんな言葉も薄っぺらにしか思えなくて、繰り返すしかなかった大丈夫も、でもきっと他の言葉と同じくらい薄っぺらな言葉だった。

あれ以来、自分の口から大丈夫だと言うたび、
今言った大丈夫はどのくらいの厚みなのかと思う。
信頼に足る、広辞苑くらいの厚みで言えているだろうか。

今年言った数ぶんだけ縦に積んだら、どれくらいの厚みになるだろう。
せめてA4用紙2000枚くらいの厚みはあって欲しい。

来年も多分、何度だって言うだろうから。
数を数えずにすむのが1番だろうけれど、きっと私には難しいだろうから。

薄っぺらぺらな「大丈夫」は数を減らして、少し厚みを持たせられたらいいな、などと考えた。