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海王星コロニーの地下埋蔵物探査 ~46億キロ先の宝探し~
二人の男女が薄暗い地下通路を歩いている。用途不明の謎のコードが蜘蛛の巣のように壁を這い、剥げて落ちた塗装が散らばっている。錆の臭いが二人の鼻につく。
ひとりは長い睫毛、緑の目の女。彼女は手足と腰の後ろに板のようなものを括り付け銃を背負っていた。
もう一人は短く刈った黒髪、眠たげな目の男。作業着下から見える彼の首の付け根から顎先まで流水状のタトゥーが覆い、その顔には古の視力矯正器具“眼鏡”を模したスマートグラスをかけていた。
ここは海王星の衛星軌道上に浮かぶ巨大コロニーの片隅だ。このコロニーには度重なる開発の途中で発生した危険な隙間があり、それを海王星人は“地下”と呼ぶ。
女、シェイナはその“地下”を探索し管理する「カヤネズミ」と呼ばれる者共のひとりだ。仕事柄地下に眠るお宝の存在を聞く機会があった。
地下では反響音が響くため、ホログラムディスプレイに浮かぶ文字で声を出さずに二人は会話する。
『かなり深く潜りましたね、シェイナさん』
『お宝ってのは深いところにあるモンさ、“先生”。今回はそいつがこの扉の奥の更に向こうにあるって話さ』
鋼鉄製の扉を開けたシェイナは急に立ち止まり、先生と呼ぶ男を訝し気に見て、扉の奥を指さした。
『“先生”これはなんだい?』
“先生”は扉の向こうにあるものを見て青ざめた。
『ア…アリゲーターという地球の生物ですね。それも平均よりはるかにデカい個体です』
『さすが物書きの“先生”、博識ィ。……で、なんでそいつが46億キロも離れた海王星の地下にいるのさ』
『皆目見当がつきません。しかしこれだけは言えます。…いま我々が持っている人間用の武器では文字通り、豆鉄砲以下です』
『クソッタレ』
巨大鰐と二人の目が合ってしまった。鰐は二人にジリジリと近づく。
『先生、グラスを遮光モードに切り替えて!閃光手榴弾をヤツにブン投げるから!』
シェイナが手にしたものを投げた瞬間、閃光が地下を真っ白に染めた。
【続く】
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