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逆噴射小説大賞応募したもの

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冒頭800文字で続きを読ませたい創作パルプ小説大賞「逆噴射小説大賞」に応募した作品まとめです。
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記事一覧

黒羽根どもを墜とせ

冬でもここ木曽山中の落合宿周辺は人の往来が絶えないと聞いた。だがいま街道の石畳にあるのは…

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しあわせをよぶ青い箱

目的の工場は古い田舎町の中、伸び盛りの雑草で埋まった空き地とボロ住宅の間にあった。 俺は…

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虚空に祈る黒女

暑い。真夏の凶暴な日光がカフェのガラス越しに僕の背中を刺していた。 向かいに座る芳野さん…

七星は駆けて霜月を斬る

冷たく青白い月光が冬の新都平安京を静かに覆う。その下の内裏の一室を燈火が照らしていた。 …

人を呑む家

「人間を呑む家、というのがあるんだとさ」 羽田谷大輔は目の前の空き家を指さした。 羽田谷…

下ろす手

某感染症の濃厚接触者になってしまい観察期間を経て職場復帰した私、板崎緑を待っていたのは、…

年に一度の先着15食限定特別シークレットラーメンとラーメン大好き細屋さん

「きたぁ!今年もあの限定ラーメンがきたあ!」 私はラーメン大好きOLの細屋さん。お気に入りのお店の限定メニューのお知らせを読んで小躍りしてる。 そのラーメンは煮干し出汁にさらに干しアジを加え、スダチのスライスを添えた、濃くも後味さっぱりおいしいラーメン。その旨味深い味を思い出すだけで私はヘヴンナウ! 但し限定ものだけあって、今夜先着15名様までというシビアな数だ。これを食べるには定時で仕事を終わらせるしかない。 私は脳みそをフル回転し超高速で仕事を進めた。 そして定時きっ

海王星コロニーの地下埋蔵物探査 ~46億キロ先の宝探し~

二人の男女が薄暗い地下通路を歩いている。用途不明の謎のコードが蜘蛛の巣のように壁を這い、…

元治元年の狼退治始末

「狼ノ群れ所々村々へ出る。都合二十名余リ、喰殺す。」 時は幕末、元治元年の秋。尾張藩東部…

人食いの怪物は紺色の月の下で啼く

軌道エレベーターから見下ろした“仮寓の星”の地表は白緑のオーロラの夜に染まっていた。窓に…

黒髪を抱いて沈む

高校生の高濱夏帆が、自分には潤一郎という10歳年上の兄がいたことと、その死を知ったのは同時…

未知の海洋怪物、倒すべし

惑星スリーテイルズの海は地球の海より緑色が濃く白い雲と海が水平線の端まで広がっている。穏…

小惑星帯を疾駆せよオールドレディ

木星小惑星群の横を小型の宇宙客船、星間連絡船ヒラフが「回送中」を示すランプを点灯させ航行…

見えない猫たちは海王星で微睡む

「猫チャーーン!」 ある日、太陽系最大の大型コロニーこと海王星リング型大ステーションの一角にある建築会社T社ビルの管理部で奇声が響いた。 管理部で各惑星現場とオンラインで管理していたある社員が急に立ち上がり大声を上げてのけぞった。 それが始まりだった。 「うわああ何コレぇーーッ?!」 インフルエンザから快癒して一週間ぶりに出社した庶務部の新入社員(研修中)のナギは異様な光景を目にして思わず後ずさった。 オフィスで、廊下で、会議室で、自販機が並ぶ名ばかりのカフェテリアで、