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商品つくるなら、最後までその商品のファンであってくれ

先日、とある企画の対談で「良い商品とは?」という問いを投げかけられました。これはかなり難しい質問です。そう簡単に答えられないんですね。

一般的には、利用者にとって、ある機能や性能が高いとか、効能や便益が大きいとか、費用対効果が良いとか、自分のセンスに合ってるとか、そういう要素が「良い商品」ということになるでしょうか。

経営という視点で見た時は、単純に売れる商品が良い商品と言えるかもしれません。利益率が高く、沢山売れる商品はビジネスにおいては凄く重要だし「良い商品」でしょう。

一方で、例えば、「環境」みたいなところから見た時、僕らの業界で言えば、プラ容器はどうなんだとか、そもそもの原料や製造工程などはどうかみたいな視点もあります。「極力環境負荷をかけない」ということ一つとってみても、何が環境負荷をかけないかを考えると、これまた答えを出すのはかなり難しいわけです。(ここ突っ込むと、それだけで1エントリーになっちゃうので止めます)

「安心」みたいな尺度からだと、こういう成分で作られた、こういう成分が使われてない、人体への影響や動植物への影響みたいなことが重要になってくるでしょう。これも何が安全なのと問いだすと迷宮に迷い込んでしまいます。

つまり、「良い商品」というのは、どの角度、どの位置から見るかによって評価が変わるということです。誰にとって、どの側面で「良い商品」なのか、ということを考えないと、本当の意味で「良い商品」なんて、答えることはできないなぁと思うわけです。

昨日、八尾のみせるばやおで、TENT×藤田金属さんのトークイベントがありました。TENT×藤田金属さんと言えば、そのままお皿にもなるフライパン「JIU(ジュウ)」でのコラボでも有名です。

TENTさんが手掛けられるものや、自身がメーカー的ポジションとして開発・販売されてるオリジナルプロダクトとかも、ほんと「あ、いいな」「欲しい」って直感的に思うものが多いなという印象です。

このトークショーの中で、TENTのスタンスとして、試作という名目で、自分が欲しいものをまず作る、工場に発注したりする、というエピソードがありました。もともと、藤田金属さんとの関係も、TENTの治田さんが、バイクスタンドが欲しいということで試作を発注してたところからだそうです。

このエピソードの中で、TENT青木さんは、「1人がめちゃ欲しいと思うものを突き詰めたら、他にも欲しいという人が絶対にいるはず」というようなことを仰ってて、とにかく、自分が欲しいものを形にしていく磨いていくことが重要、というようなことを説明されていたのがとても印象的でした。

また、デザインの仕事や、プロダクト開発の中で意識していることは何か?という問いかけに対して、自分自身が世界一のユーザーになること、と答えられていました。どんな商品を作るにしても、試作を作っては、それを自分自身で徹底的に使うようにしている、ということです。

僕も、このスタンスや考え方には全面的に同意します。まず、自分が欲しいもの突き詰める、そして、試作を実際に徹底して使ってみて、それを磨き上げていく。ブランドとか、マーケティングとか、その辺の話は、後回し。突き抜けたプロダクトを作ることを目指す。少なくとも、僕らぐらいの規模の会社なら、ここは外せないなと思ってます。

木村石鹸には、商品は、つくりたい人がつくって良いという、本当かウソかよくわからないルールがあります。

商品つくっていいよ、ただ、作った商品は、最後の最後まで、誰がなんと言おうと、自分はこの商品が好きなんだ、ファンなんだ、そういう覚悟で向き合えるものにしてくれ、とお願いしてます。

つまり、木村石鹸においての「良い商品」とは、まずもって、その商品を作ってる本人が、その商品の熱狂的なファンでいられるかどうかで測られるものなのです。

そりゃ、売れる商品もあれば、売れないこともあります。色んなこと考えて、マーケテイング組み立てて、SNSやテストではすごく反応が良かったのに、いざ発売してみたら、全然売れない、なんてことはザラです。

商品づくりには「妥協」もあります。無尽蔵にお金も時間もあり、労力もかけれるなら、とにかくこだわりにこだわりぬいた、比類なき商品を作る、ことも出来るかもしれません。でも、現実はそうではない。色んな制約や条件があり、本来、自分はこうしたいのに、そうならない、みたいなことが山ほど出てくるわけです。そうすると、何を切り捨て、何を選ぶのか、どこは妥協して、どこは固執するのか、そんな判断はどうしても必要となってきます。優先順位から諦めないといけないことは必ず出てきます。

そうやって発売した商品が売れなかった時、評判が良くなかった時、たまに安易に、その妥協せざるを得なかったところや、切り捨てざるをえなかった部分に、商品失敗の原因を押し付けてしまう人がいます。

こういったうまくいかないことも含めて、その商品を「自分の商品」だと思えるかどうか、私はこの商品が好きなんだと言い続けられるかどうか、それは言葉で言うほど簡単なことではないと思うんです。

どんな状況でもです。少なくとも、その商品をつくった人ぐらいは、最後まで、いや、俺は、私は、この商品は最高だと思います。この商品の良さが分からないほうがおかしいと思います、ぐらいまで商品を愛して欲しいのです。

商品をつくるには、それぐらいの覚悟で臨んで欲しいなぁと思ってます。商品を作るものの責任としては、その覚悟が持てるかどうかじゃないかと。

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