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クルマのはなし

『さよならセダン、幸せの車は 実用SUV「身の丈で」』
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC12BCO0S1A810C2000000/

なんともセンセーショナルなタイトルの記事ですが、日本でセダンが減ってるのは、皆さん、もう数年前から実感していますよね。僕自身は、ここ何年かセダンを何台か乗り続けていますが、軽自動車も小型車も背が高くなって、まさにSUV的な形になってきてるのは、運転していて気付きますし。
なので、『トヨタ自動車が「セダン型クラウン」の生産終了検討』、『日産自動車が「スカイライン」の開発中止』といったニュースが出てきても、まぁ「そうだろうな~」という感じですよね。

なんで、こうなったんですかね?
特に、記事は日本だけの話ではなくて、世界的な話なので、とても興味深いですよね。
もちろん、簡単に言えば、「セダンが選ばれなくなったから」なんですけど、それは間違いないとして、では「なぜセダンが選ばれなくなったのか?」を考えると、「唯一の正解」はないように思うものの、いくつか理由がありそうですよね。

例えばですが、日本を見ると、以下5つくらいが挙げられそうです。

➀ クルマの性能が全体的に上がった
 → 元来、セダンタイプの方がドライバビリティは高いはずですが、全体的に性能が上がったことで、SUVやミニバンなどのネガティブな要素が減り、室内の広さや運転するときの視界の高さなど、良い点が注目されるようになった。また、安全性も★の数で示されるようになり、必ずしも大きなクルマを選ぶ理由がなくなった。

② クルマはもはや趣味ではなく、道具になった
 → 全体的に性能が上がったことにも関連しますが、バブル崩壊後に自動車メーカー自身がミニバンなどの実用車を重視した結果、クルマを趣味とする人が激減した。

➂ クルマの地位が下がった
 → その昔、クルマがないと彼女ができない、とまで言われていたが、駐車違反や飲酒運転の取締強化などもあり、クルマを持つことのネガティブさが際立ってきた。今や、多くの人にとって、より高い地位にあるのはスマホだろう。

④ 結果的に所有する価値が大幅に下がった
 → 前述したような背景もあり、かつては駅前まで行かないと使えなかったレンタカーが、タイムレンタル的なサービスが増え、所有せずとも簡単に利用できるようになった。

⑤ クルマのヒエラルキーが崩れた
 → 昔は、カローラから始まって、マークⅡ、クラウンと、出世とともにステップアップしていくようなことがありましたが、こうしたヒエラルキーを嫌う人たちが、クラスに属さないクルマ(例えば、SUV)を志向するようになった。

こういった文脈で考えると、今後、自動運転が実用化されたり、電気自動車があたりまえになれば、所有から利用への流れは、さらに加速していくでしょう。
アナログからデジタルへの移行では、日本ではまずAVを得意としていた家電メーカーが打撃を受けました。当時、iPodが世界を席巻したとき、『iPodは、Walkmanを生んだソニーこそが手掛けるべきビジネスモデルだった』とか言われましたが、あれから10年過ぎて、いよいよクルマもデジタル化へ舵が切られた感じでしょう。
そもそも多くの自家用車は所有しているほとんどの時間、駐車場で停まっているだけなので、利用する時間だけお金を払った方が合理的でもありますからね。

また、SUVは自動車大国アメリカで大人気ということも大きな影響があるでしょう。
そもそも真っすぐで広い道が多いアメリカでは、欧米のような曲がりくねった石畳での性能などは問われないため、ドラバビリティなんてことはさほど要求されなかったこともあるでしょう。
記号論として、欧州の歴史あるメーカー(ブランド)が好まれる傾向はあっても、セダンでなくては・・・という人は少なかったような気がします。
実際に、メルセデス、BMW、アウディ、VW、ポルシェ、アルファロメオ、ジャガー、ランボルギーニ…といった多くのメーカーがSUVをリリースしていて、それなりのポジションを得てますし…。

…といったことを考えると、クルマが再び趣味になるような時代が来ないと、SUV優位の時代が続くでしょうね。

せっかくなので、自分自身のことを振り返ってみます。
僕は大学時代(35年くらい前!)に2ドアクーペに乗っていたのですが、当時はズバリ!モテたい一心で、デートカーと言われるようなクルマに乗ってたような気がします。もちろん、デザインが好きだった、走りも良かった、というのもありましたが、自分自身がカッコイイ訳でもなかったので、クルマの魅力でカバーしようとしてたってこともありそうです。笑

2ドアクーペは、スポーティーカーに分類されてたと思うのですが、実際の走りがどうかということよりも、やはり「家族が乗るようなクルマ(当時は4ドアセダンが普通でした)ではない」という記号性に価値があったような気がします。
ちなみに、2ドアでも2シーター(2人乗り)は少なくて、多くは4-5シーターで後席がありました。
どちらかと言えば、後席はエマージェンシー用…という位置づけで、もっぱら自分のバッグや着ていたもの、あとはカーステレオで聴くためのカセットテープやCDを置いておく場所…だったと思います。

そんなこともあって、入社してから買った初めてのクルマも、2ドアクーペのスカイライン(R32)でした。
伝説の「GT-R」が復活したときの型でしたが、やはりGT-Rには手が届かず、「GTS-4」というグレードにしました。この「GTS-4」は、「GT-R」に近くて、かなり端折って言えば、エンジンが2000ccにダウン(GT-Rは2600cc)するだけ(実際は、GT-Rになると、ブレーキもブレンボになったり、バルブに冷却用のナトリウム封入になっていたり、と別物でしたが)で、FRベースの4WD(アテーサ)という点も変わらず、しかもATがありました。(その頃の僕は、毎週スキーに行っていて、帰りは渋滞25kmはあたりまえだったので、MTしかないGT-Rはお金があっても候補にはなりませんでした。)

スカイラインに乗ったのは、この1台だけだったんですけど、今でも「もう一度乗りたいクルマ」ですね。
当時の日本車は、ハンドリングもブレーキもシャビ―なものばかりでしたが、この「GTS-4」は市販車とは思えないシュアーなハンドリング、しかも純正ブレーキでもガツン!としっかりと止まる高性能さで、めちゃめちゃ感動したことを思い出します。
とにかく街中でも高速でも山道でも、本当に楽しいクルマでした。アテーサの威力なのか、チェーンをしたクルマを手押ししても登れないような凍った山道を、交換間近のスタッドレスタイヤでスイスイ登っていく様子は、感動的ですらありました。

…と、めちゃめちゃ気に入っていた「GTS-4」でしたが、結婚してやがて家族が増え、常時3人で乗るようになると2ドアであることが大変で大変で…。
例えば、チャイルドシートは後席にセットするしかないのですが、そこに子供を座らせるだけでも、かなり大変なんです。前の席を倒して、子供を抱えて後ろの席に乗り込み、座った状態で隣のチャイルドシートに移して…。地味に腰を痛める感じになってしまい、早々にクルマを買い替えることになりました。

これ以後は、車名は割愛しますが、4ドア(5ドア)のステーションワゴン、両側スライドドアのミニバン、4ドアセダン2台…という感じなのですが、ステーションワゴン、ミニバンというSUV的なものを2台乗り継いだあとに、セダンを選んでいるのは、私はクルマに求めているものが、大学時代の原体験にあるからかもしれません。
実際のところを言えば、子供が小さい頃は、外出時の荷物も多くなりがちだったので、ベビーカーがそのままカーゴルームに入るステーションワゴンもミニバンも重宝してましたし、それなりに気に入ってたんですけど、正直言って、運転が楽しくなかった(笑)んですよね。

やはり、僕の中では、クルマはすでに趣味のひとつになっていて、「クルマってこうあってほしい」というところが、ステーションワゴンやミニバンでは物足りないと感じた…ということです。簡単にいえば、クルマとしての基本性能が高いクルマが好き、ってことなんだと思います。
キビキビと気持ちよく走って、キュッと止まる、って感じをクルマに求めている気がします。
やはりエンジンルーム、キャビン、トランクと3つの箱に分かれているタイプは、それなりボディ剛性があって、全体的にクルマとしてカチッとしてるという印象です。

当然、今となっては新たな技術開発などによって、ミニバンでも高いドライバビリティを発揮するクルマもあるのかもしれませんが、僕にとっては、車内の広さとか運転時の視界の高さといった、SUVの長所として言われる点は、ドライバビリティを下げる要因として理解されている、ということですね。

…と、いろいろ書いてきましたが、最近では、ほぼ月1-2回のゴルフにしか使ってないので、コロナ禍が収束してきたら、またドライブに行きたいなぁと思います。
それでは、今日はこの辺で。

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