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現場仕事が一番正しい

現場の泥臭い仕事を下に見る人がたまにいる。「上流の仕事がしたい」とか「戦略的な仕事がしたい」という、具体的なイメージは湧いていないが上っぽいことを言う人がいる。そういう人には「あなたのいう上流って何?」「戦略的とは?」と聞き返したくなることもある。

私達は事業を作っているので、その顧客(ユーザー、クライアント)に近ければ近いほど、彼らの本当のジョブに触れていればいるほど、強い。現場の仕事が最も重要だ。それを下に見る人は事業のことをよくわかっていないし、私は一緒に働こうとは思わない。

第二次世界大戦の勝敗を分けた、ある作業員の気付き

エニグマという暗号を知っているだろうか。ナチスが第二次世界大戦時に使用していた暗号で、どの日にどの艦隊がどこを攻めるかなどの司令はすべてこのエニグマという暗号で伝達されていた。逆にいうと、この暗号を解読できればイギリス軍は勝利できるといっても過言ではない肝である。そこでイギリス軍は天才数学者のアラン・チューリングを軍に招聘し、予算を与え、彼に解読を命じる。詳細は割愛するが、彼は暗号を解読するために計算機(雑にいうと今のPCの原型)を作った。

が、それだけでは暗号が解読できなかったある日、傍受した暗号をタイピングし続ける現場の作業者がポロッと「あの人たち、毎日暗号を送るとき最初に天気を言うのよ」と言ったことをきっかけに暗号が一気に解読されるのだ(私の読んだものがフィクションでなければ)。もちろん暗号なので、作業員たちは本来その意味を理解しえない。だが、謎のテキストだとしても毎日毎日それを打ち込んでいた人にはその傾向が読めてしまうらしい。それをきっかけに暗号が解読されたことにより、ナチスはイギリス軍に戦略を完全に掌握されてしまった、という話だ。現場の継続した作業による気付きが結果を大きく左右するのだ。

私自身こういう経験がいくつかある。
新卒2年目の頃、中途採用チームで毎日ただただ面接の日程調整をしていたころ。本当に忙しくて、毎日終電で帰るような時間になっても1週間前の面接結果を連絡出来ていないようなひどい状況だった。みんなが疲弊していた。

ある日、いつものように合否連絡をしていたところ、面接から5日以上経過してから合格連絡を送ると、次の面接を辞退されることが妙に多いことに気が付いた。いわゆる採用戦略を練っているような先輩リクルーターは誰も気付いていなかったが、毎日ひたすら日程調整をしていた私達は重要な事実に気付いた。4日以内に合格連絡をしないと選考辞退になる。

その日から「不良品率(3営業日以内に合否を送れなかった数。今思うと名前は褒められたものではない)」をKPIとして置いた。選考辞退者が減るので、過去ほど大量の採用候補者を集めなくて済み、メンバーみんな人権のある時間に帰ることができるようになった。

過去の自分がすごい、という話ではない。現場で毎日泥臭くやっている人の肌感は非常に重要だということを学ぶ重要な体験だった。

最近、こんな記事を読んだ。

ある日、町の乳幼児健診から帰ってきた心理士の妻が、ビールを飲みながら「自閉症の子どもって津軽弁しゃべんねっきゃ(話さないよねぇ)」と言ってきました。 障害児心理を研究する私は、「それは自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)の独特の話し方のせいだよ」と初めは静かに説明してやりました。しかし妻は、話し方とかではなく方言を話さないのだと譲りません。

この記事の本旨とはズレるが、研究者のようなあらゆることを知っている上流職と思われるような人が知らない重要な事実を現場の人が知っている、なんてことは世の中にはたくさんあるように思う。私はこういう「現場の人だけが認識できるが、表出しない重要な事実」の大切さを思い出した。

事件は会議室じゃなくて現場で起きている

さて、話を戻そう。世間が「作業」とか「泥臭い」とかいうものの中にこそ、実は本当に重要な事実が隠れている。

そこに自ら携わり続けることは非常に重要だ。これは社長であろうがなんだろうが、すべて自分でやれとは言わないが、自分の肌が1ミリも現場に触れなくなったら危険だと思っている。
Twitter社のジャック・ドーシーCEOはいまだに自らユーザーインタビューをするらしい。ユニクロの柳井さんも同じようなことを常々言っている現場主義者の印象だ。真意はわからないが、菅首相も民間人と意識的に接触しているのはそういうことなのかもしれない。

泥臭い作業をやればいい、と言いたいわけではない。そのような中に隠れている表出しづらい重要な事実(たいていそれはただの違和感として最初は現れる)を大切にしてほしい。嬉しいことに、うちの人たちは役職等がついていても泥臭く現場の肌感を忘れないようにしている人が多い。スタートアップなので、というものではなくこれはどんな会社にとっても非常に重要な仕事だと思う。

今、あなたがやっている現場仕事は我が社にとって、最も重要な仕事だ。
あなたの気付きは正しいし、それを大切にしてほしい。


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