わたしの欲しいもの/中田裕二 ✕ 金子みすゞ

『誰もが欲しいもの
わたしは欲しくない

からだ中星をまとった
あの子の心は
まっ暗

わたしが欲しいもの
誰も欲しがらない

頼りない腕を
ひろげた彼の
やさしい微笑み

悲しみを
押しやるような
光に飢えた世間が

なだれ込み奪い去ろうとも
消えない空のような、うた







ひとりでいるための、うた








わたしの欲しいもの

わたしだけにあるもの

ひそかに記憶を
たずねたなら

いつでも
やさしい面影』








歌詞を一部抜粋させて頂きました

拙い聞き取りなので誤字があったらすみません

(漢字などの表記も自分勝手ですみません)








あの檀蜜さんが
推していらしていた、
中田裕二さん


発する言葉を
とても丁寧に歌う方


檀蜜さんも同じく
文章や言葉がお美しい




ソロ以前は
《椿屋四重奏》というバンドをなさっていらしたそうで、初めてお名前を知った時は字面感がドストライクだし、そのネーミングセンスに脱帽した







この曲を聴いていたら

大正から昭和初期にかけての童謡詩人、金子みすゞさんがよぎり、
まるで彼女のことを歌っているかのように想えた

「私と小鳥と鈴と」や「こだまでしょうか」などの詩が有名で、ご存知の方も多くおられるとは思いますが

みすゞさんのうたを
みっつ
一緒に添えておこう











「蜂と神さま」






蜂はお花のなかに

お花はお庭のなかに

お庭は土塀のなかに

土塀は町のなかに

町は日本のなかに

日本は世界のなかに

世界は神さまのなかに



そうして、そうして

神さまは、小ちゃな蜂の中に










「土」





こっつん、こっつん、

打(ぶ)たれる土は

よいはたけになって

よい麦うむよ


朝から晩まで

踏まれる土は

よい路になって

車を通すよ


打たれぬ土は

踏まれぬ土は

要らない土か


いえ いえ

それは名のない草の

お宿をするよ










「露」





誰にも言わずにおきましょう


朝のお庭の隅っこで

お花がほろりと泣いたこと


もしも噂が広かって

蜂のお耳に入ったら

わるいことでもしたように

蜜を返しに行くでしょう








(句読点が異なりますが、ご了承くださいませ)







金子みすゞさんは、お若い頃
本屋さんにお勤めでいらした

その時期がみすゞさんにとって
青春だったのかな


田中美里さん主演の映画「みすゞ」を観たことがある

戦場カメラマン、一ノ瀬泰造さんの伝記映画「地雷を踏んだらサヨウナラ」の五十嵐匠監督

脇を固める俳優さん方も素晴らしかった





中田裕二さんの歌声も
そこはかとなく
哀しさもあり
懐かしさがあって

どことなく
あたたかい




この曲のヴォーカル以外の音が電子オルゴール音の連なりみたいなのは故意なのかな、と勝手推測



歌詞のなか
「世間」という言葉を使ってらっしゃるけれど、中田さんの歌声には目の前の景色を礼拝堂の出来事にしてしまうかのような包容力を感じる




金子みすゞさん同様、
福内耳招く素晴らしい歌い手さん













わたしの ときおり ほしいもの

そんざい が わたしてくれる

きもち ほぐれる よろこび

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?