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人生、三勝四敗

平野啓一郎さんの「ある男」という小説を読んでいる。

その中に出てくる女性が人生を三勝四敗と表してて、なんかすごいいいなぁと思った。主人公もこの三勝四敗に「負け越してる」とツッコミを入れていたが、負け越しで正しい。

真の悲観主義者は明るい!っていうのが、わたしの持論なんです。そもそも良いことを全然期待していないから、ちょっと良いことがあるだけで、すごく嬉しいんですよ
みんな、この世界の評価が高すぎるんですよ。願望ですよ、それって。だから、人が不幸になっても、本人が悪いって責めるし。自分の人生にも全然満足できないし。

友達になりてえ、そんな感想だ。受け取り方の問題かもしれないけど、私も基本的には生きてて楽しいこととかそんななくて、楽しいことが起きたらラッキー的な、悲観主義者である。自分が自分でできることはやるけど、社会によってそれができないこともあるし、潰されることもあるし。

負け越してるけど、勝ったこともある、そのくらいでいいなと思った。世間の言う、勝ち組とか負け組で行ったら私は完全に負け組だけど、勝ち組の「恋人がいてまたはその先の結婚して、子どもがいて、家があって」というところに行きたくないので大丈夫でごわす。どこらへんが勝ちなのかいまだに理解できない。あれか、王道が勝ちってことなのか。王道=つまんねえ、ではないのか。このあたり深堀するとまた色々言われそうなのでやめます。

主人公がすでに帰化している在日三世というところもこの小説の面白いところ。私の好きなアイデンティティにまつわる考察が多くて興味深い。彼は弁護士でもある。在日三世であり弁護士である彼が、当事者は被害者も加害者もいて、だからこそ第三者が関与すべきと話していたシーンが印象的。

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朝8時に起きてコーヒー淹れて、午前中に半分くらい読もうと思ってたら、結局今まで読み続け、読み切ってしまった。昨日コンビニで買った菓子パン一つで昼過ぎまで過ごすなんて、どうりで空腹なわけだ。

一文や登場人物の一言でいきなり涙が出る話だった。淡々と語られている中に、急にドンと大きな衝撃が与えられるような。号泣はしなかったが、最後まで頬に涙がずっとあるような感じだった。過去ってどのくらいその人に影響するのか、そして自分に影響してきたのか、相手のことを知るって好きになる嫌いになるってどこからなのか、そんなことを考えさせられた作品だった。

男性の作品なのに、女性目線で語られるところがとてもリアルで、不思議な感覚になれるものでもあった。映像化、しかももうすぐ公開なのか。気になるな。