子どもの好奇心と探究学習の関係性を紐解く
はじめに
子どもの科学教育において、探究学習は重要な位置を占めています。しかし、個々の子どもによって探究学習の効果は異なるのではないか。この疑問に答えるべく、オランダのアムステルダム大学のTessa J. P. van Schijndel氏らの研究グループは、子どもの好奇心と探究学習の関係性について調査を行いました。
本研究の背景
従来の研究では、10歳以上の子どもやコンピューター支援学習に焦点が当てられることが多かったのに対し、本研究は7〜9歳の子どもを対象に、実際に手を動かす探究学習を観察しています。また、学習の結果だけでなく、学習プロセスにも着目した点が特徴的です。
研究方法
研究には139人の子どもが参加し、以下の3つのテストが実施されました:
科学的発見課題: 探究学習を評価
レーブンの色彩マトリックス検査: 知能を測定
水中探索ゲーム: 好奇心を測定
科学的発見課題では、子どもたちは透明なボールの中に入った色付きのブロックの重さを比較する実験を行いました。この課題には2つのバージョンがあり、一方では実験の原理について説明を受け(高構造化条件)、もう一方では説明を受けませんでした(低構造化条件)。
研究結果1: 好奇心と探究学習の関係
高い好奇心を持つ子どもほど、探究学習からより多くの知識を獲得することがわかりました。しかし、予想に反して、高い好奇心を持つ子どもは実験に費やす時間が短く、実験の回数も多くありませんでした。
研究結果2: 学習環境の構造化の影響
学習環境の構造化は、全ての子どもの実験時間を延ばす効果がありました。また、知能の低い子どもたちの実験の質を向上させましたが、知識の獲得には影響しませんでした。
研究結果3: 好奇心と学習環境の構造化の相互作用
予想に反して、好奇心の高低によって学習環境の構造化の効果に違いは見られませんでした。
考察: 好奇心が学習に与える影響
研究結果は、好奇心が高い子どもたちが効率的に実験結果を振り返り、情報を統合していた可能性を示唆しています。これは、探究学習において「実験を行うこと」と「実験結果を振り返り学ぶこと」が異なるプロセスであることを示唆しています。
教育への示唆
この研究結果は、科学教育の実践に重要な示唆を与えています。好奇心の低い子どもたちに対しては、実験結果の振り返りに焦点を当てた支援が有効かもしれません。また、知能の低い子どもたちには、学習環境を構造化することで探究のプロセスを改善できる可能性があります。
研究の限界と今後の展望
本研究では、実験時間の測定方法に改善の余地があります。また、好奇心が高い子どもたちがどのように効率的に学んでいるのかについて、さらなる研究が必要です。
おわりに
本研究は、子どもの好奇心が探究学習に与える影響を明らかにし、個々の子どもの特性に応じた教育の重要性を示しました。今後、これらの知見を実際の教育現場でどのように活かしていくかが課題となるでしょう。