0008情報の開示と制限と

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起稿20240306
改稿20240601

0008情報の開示と制限と
2月10日土曜日
休みだ。さて、とりあえず溜まった衣服を洗濯機に入れて、洗濯機に仕事を任せ、俺はご飯を炒めて、昨日使わなかった野菜を投入。野菜がヘニャッとなったら、塩、胡椒、粉末ダシ、醤油を投入して野菜炒めにして、見逃した動画を見ながらの朝食。
朝食が食べ終わると、動画を流しながら、干しっぱなしになっている洗濯物を取り込んで、たたんでいく。
そうこうしているうちに、洗濯機が終わったぞと主張してくるので、洗濯の終わった衣服を干して、 週末の家の仕事を終える。
さて、帰るとしますか。
一連の戸締まりを済ませて、車に乗り込んで、高速道路に向かって走り出す。
ガソリンスタンドに寄ったり、あちらこちらと買い物したりとしながら、両親の家に向かう。
帰れば帰ったで、いつもと同じくらいの時間に帰って手土産を渡し、いつものように近況を報告しながら、当たり障りのない話をし、母の料理を食べつつ、父と晩酌する。
テレビに向かって素直な感想を言ったり、母から弟妹の近況を聞いたりと、いつもの両親との休日を過ごしていた。そんな時にスマホに着信。シコウとからだ。
「もしもし」
「もしもし、リカイ。今電話大丈夫?」
「あぁ、大丈夫。どうした?」
「メカニカルアーマーリーグの運営のメカニカルアーマー協議会のホームページが更新されててさ」
「なんかあった?」
「出場選手のプロフィール内容について、情報公開制限を緩和するらしいんだ。」
「情報公開制限の緩和?」
「うん。僕たちも参加する段階になったら公開されることになるね。昨日の発表だったみたいだけど、今掲載されているプロフィールは、まだ改定されてなかったから、どの程度になるか判らないけど」
「どこまで公開させるのかね」
「詳しく書いていなかったけど、他のスポーツと同じくらいの公表になる可能性があるね」
なんとなくシコウが興奮している気がする。プロフィールの内容が充実することは判るが、これの影響がイマイチ判らない。
「あぁ、それってヤバイ?」
「僕たちの情報管理が試されるかな。」
「公開される以上に情報提供しないようにってとこかい?」
「それもあるかもしれないけど、会社のファンへの対応も求められるかも、あ、でも、過激化を防ぐ目的もあるかも」
「っていうと?」
「僕も今回のことで調べ直していたけど、人気選手は結構な確率で人物特定されていたんだ。」
「非公開にしているのにか?」
「うん。それによる被害も出てたみたい。」
「被害?」
「ストーキングだとかそういう関係の奴」
「あぁ、隠しているから暴きたくなるって感覚?」
「うん。公開情報のレベルにも寄るけどね。あと可能性だけど、選手に目を向けさせたいのかなって想像してるんだ。」
「それって、あの機体に目を向けられたくないってことか?」
「なのかなぁ。情報が足りないからなぁ。その辺だろうなぁって感想レベルだけど」
「一応、みんなに情報共有しとこうか。今日は参加できないから、シコウからしてもらって良いかな?」
「OK。みんなに伝えとく。火曜日の会議の時にも話題になるかもと思うし」
「あぁ、あり得るなぁ。ありがとう連絡」
「大丈夫大丈夫。誰かに聞いてもらいたかったからさ、なんかスッキリした」
「あぁ、話せる内容を考えながらだと、意外に疲れるもんな」
「だね。じゃ、ちょっとログインしてくるよ」
「あぁ、よろしく」
電話を切ると母が心配そうな顔をしている。
「なんかあったの?」
「あぁ、今度の新プロジェクト関係の話でね。」
俺が言い難そうにしていると、なんだか難しい顔になる。
「なんか問題なの?」
「守秘義務って奴があってさ、まだどこまで話していいのか判らないんだよ」
「喋っちゃダメなら喋らない。いい」
「大丈夫大丈夫。喋らないよ。とりあえず心配するほどのことにはならないから」
結構真剣な顔で助言する母を落ち着かせるつもりで、受け答えると父が顎に手を当てて何故か目を閉じている。
「新プロジェクトって奴に入ったのか?」
「うん。内容は話せないけどね。」
「企業秘密か?」
「まぁそんなとこ」
「ふ~ん。無理するなよ。」
父も話に参加してきて飲み直し。心なしかなんか嬉しそうだったのが印象に残った。その後は守秘義務関係の話には触れず、その日は泊まって、翌日もゆっくりして過ごしてから、一人暮らしの我が家に戻った。

2月11日日曜日
両親の家から我が家に帰ってきて、特別何かすることもなくて、サバイバルネットにログインすることにした。

椅子に腰掛けて、VRセットを取り付ける。
「アクセスログイン。」
「音声確認、認証クリア、網膜確認、認証クリア、コントローラー接続確認、クリア。お帰りなさい。リカイ。」
VRセットの女性音声が流れる。
「サバイバルネット、オープン。ログイン。」
「サバイバルネット、オープン。ログイン…。クリア」
俺が呟くと、VRセットの女性の音声が復唱し、目の前にゲームの世界が現れる。
「ようこそ、お帰りなさいませバウト様。」
今度はゲームの女性音声が入り、大勢の人が行き交う街中に視界が変わる。
「ギルドアイテム ワープゲート 帰還」
いつものように視界が街中からギルドルームに切り替わると、ケンザンとシクミがいた。
「おつかれ」
「おつかれ。リカイ。」
「今日は二人?」
「うん。シコウは昨日の件で更新確認してから、調べたいことがあるとか言ってて、トウハは今日は娘さんとお出かけとか言ってたかな」
「スンカはいつも通りだろうなぁ」
「スンカさんは、いつも日曜日はログインしないってとこかい?」
「ん。スンカはいつも日曜日はログインしない」
「だな。まぁあまり気にしないで大丈夫。なんとなくの確認だから」
「そっか。」
「シコウの昨日の件て、情報公開の関係かい?」
「うん。昨夜教えてもらったけど、面倒になりそうだね」
「そうかい?」
「リカイはテレビを観てないから解ってない。あれ結構宣伝してる。」
「そうなのか?」
「ほら」
シクミの得意そうな声と何故かケンザンからため息が聞こえた気がする。
「確かに。たまにテレビでもアレの試合を見かけますね。ニュースのスポーツコーナーとかで」
「そうなんだ」
「選手紹介とか、解説とか色々と僕たちも参加することになったら説明されるだろうって、みんなで昨夜話していたんです。」
「ネットでは、人気チームのプレイが主体だったと記憶してるけど?」
「そうですね。テレビだと同時に始まる競技は注目度の高いチームを狙って放映されますからね。でもネットでも全試合の中継を掲載していますから」
「遅かれ早かれ、解説はされるだろうね」
「ですね。」
「ま、こればっかりは仕方ない。成るようにしか成らないよ。」
「そうですね。」
なぜかケンザンがクツクツと笑い出した。
「どうした?」
「いや、何でも無いんですが…」
ケンザンは、返答するものの、まだクツクツと笑っている。
「昨日スンカがリカイの真似してた。こればっかりは仕方ないってなんか言いそうだって」
「あぁそういうこと」
シクミの説明で納得。まさか予想されていたとは思わなかった。
「そういえばミッションには、あれから行った?」
「昨日今日と遊んでいるけど面白いね。」
「ケンザンは飲み込みが早い」
「お、有能だな」
「みんなが教えてくれるからですよ」
「まぁまあ、慣れてくれるのは有り難いよ。ゲームもだけど、チームとしてさ」
「チームプレイだと、協力体制は必要。」
「うん。俺もそう思う。メンバーへの警戒が薄いだけでも助かるよ。会話が成立するし」
「ありがとうございます」
その後もゆったりと日曜の夜を雑談して過ごし、明日は会社ということで、ほどほどの時間に解散となった。

2月13日火曜日
昨日は建国記念日だったが、俺の勤める会社は休みではない。
いつもより空いている通勤路という週明けになった。
平穏な一日を終えて、みんなでウォーキングをし、体力作りをしたら、そこそこゲームで遊び解散。
今日は2回目の新プロジェクト。メカニカルアーマーリーグ参加に関する会議の日となった。

「それでは始めようか」
グウゼン部長のそんな声から会議は始まった。
今回のメンバーは、グウゼン部長と俺、トウハ、シコウ、スンカ、シクミ、ケンザン。ともう一人。スーツを着ている人がいる。
前回参加した社長が欠席して、ケンザンとスーツの人が加わった面子になっている。
「まずはエイユウ君の参加もあり、このメンバーで、メカニカルアーマーリーグへの参加対応をしていくつもりだ。」
「それは、プレイヤーとしての参加ですか?」
ケンザンが確認の声を挙げるとグウゼン部長が静かに頷く。
「守秘義務関係があることもあり、様子も見ていたが、今のところ問題も起きていないし、話も広まってはいない。一部、新プロジェクトが発足されたという話は出回ったようだが、内容までは出ていないので、想定の範囲内と見ている。なので、このメンバーでの登録をそのまま続けていくつもりだ。今の時点で参加を取りやめたいという場合は、早めに申し出て欲しい。」
皆反応を示さずにいると、グウゼン部長がイスから立ち上がった。
「それでは、このメンバーでメカニカルアーマーリーグに参加することにする。メンバーの申請関係の資料があるので、確認して欲しいのだが、先にこちらの方を紹介しよう」
「メカニカルアーマー協議会から参りました。ヒカクと申します。今回、我々が企画並びに運営しているメカニカルアーマーリーグに参加していただく、参加メンバーが決まったとお聞きし、こちらにお邪魔させていただきました。」
席を立ち会釈してから自己紹介を済ませると、礼儀正しく一礼する。
「ヒカクさんは、今回の我々の窓口業務を担当してくださることとなった。当分の間は、メカニカルアーマー協議会の訓練施設にて業務を進めていただく形になる。」
「協議会と御社との要望や要請の窓口や整備関係の申請関係。研究開発時の手続きやその他諸々の窓口業務を承る形となっております。お気軽にお声掛け下さい。」
グウゼン部長の説明に補足説明を加え、静かに居住まいを正している。かなりお堅い人かもしれない。
「質問しても宜しいでしょうか?」
「問題ないよ。コウゾウ君」
グウゼン部長が手許の書類を隣に座る俺に渡している時に、シコウが問いかけた。
「先日、土曜日の夜に知ったことなのですが、選手の情報公開制限の緩和がされるということが、運営、協議会のホームページにあったのですが、そちらに対して会社はどのように考えているのでしょうか?」
「そのことか。運営のメカニカルアーマー協議会からも、このことに関して我々に通達は来ていて、選手情報についてだが、ホームページや放送などで開示出来るのは氏名と年齢のみ。それ以外の出身地や趣味などの個人的情報は基本的に出さないことにしている。ちなみにだが、我が社はまだ世間に参加表明していないので、まだ掲載はしていないが、正式参加後に掲載するつもりだ。」
「基本的にということは、うっかり発言して広まってしまっても問題ないということですか?」
「それについては私からお話ししましょう。説明が前後してしまうかもしれませんが、海外の違法賭博が先日検挙されました。」
「違法賭博ですか?」
「はい。メカニカルアーマーリーグの勝敗を賭けたり、命中率のランキング予想だったりと、メカニカルアーマーリーグが賭けの対象として認知されたとお考え下さい。現在、メカニカルアーマー協議会参加国は7つ。いずれも先進国として名のある国々ですが、賭博自体が合法の国もありますし、認可されていない違法賭博が無くなったという話は聞きません。少なくともあるものと想定する方が選手であるあなた方と、その所属される御社のような企業を守る意味あいで、今回の選手の方々の有名化を手段として選びました。」
「有名化?」
「はい。どちらにしても危険が伴ってしまいますので、苦肉の策ではあるのですが、ある意味で一般の方々にも顔と名前を知っていただくことにより、普通の、一般の方々よりも注目度を上げ、行動を観られてしまう状態にし、誘拐等が発生した場合の目撃情報を増やす効果と、違法賭博などの取引及び勧誘のような後ろ暗い行為に走ってしまった場合の目撃情報を増やす効果などがあります。改訂前の状態と比べますと、起きてしまってからになりますが、対処方法が少なくともある状態になります。」
「なるほど、今回の選手の情報開示は世間の目も監視に回したいということなんですね」
「どういう意味なんだ?リカイ。」
「顔も名前も公開されれば、少なくとも知り合いには俺達は特定される。」
「そうだな」
「それこそ、昔の知り合いや、会話をしたことが無いが、どこの誰かを知っている奴はいる。」
「そうね」
「多少でも注目を集めるようになればな、俺達は話のネタにされる可能性が高くなり、ちょっとした監視状態に晒される。」
「それは嫌かも」
「まぁそうだよな。ただ、今回の運営が取った手段は、周囲から多少注目が集まるようにして、危ないと思われる方々からの被害に遭ったときに、少なくとも目撃情報を増やすのが目的。それ以外にもなんかありそうで、怖いけどね」
「そこまで明言していませんが、大筋ではその線を一番の効果と観ています。残念ながら付録とのバランスがとれないのが悩ましいですが。」
「付録?」
「マスコミや一般の方々にも興味の目で観られやすくなるという意味でですね。話が逸れましたね。以前からメカニカルアーマーという機体について、軍事技術に関する情報を探るもの達が多かったのは事実で、これは国家間の軍事力競争の一環だと認識していますが、賭けの対象になるほどの知名度のある競技になってしまったので、対処方法を改めたというのが今回の改定になります。ちなみに、うっかり発言ですが、ご自身の情報に限りではありますが、許容の範囲内です。おすすめはしませんが」
「そうですね。会社としてはどうします?」
「ユキサキ。お前、今スゴく悪い顔になってるぞ」
「ん。マンガの悪役並み」
「シクミ」
「失言。続けて」
「はぁ。別に悪巧みなんか考えてません。で、どうします?グウゼン部長」
「先程話したままだ。名前と年齢のみだな。顔写真はいったん避ける。ホームページで公開するとしても、そこまでだ。他の参加企業とも合わせる形がベストだろう。」
「そうですね。早急に必要となるものではありません。御社の場合ですと、本戦に参加されてからでも遅くはないでしょう。その頃には、現状で参加されている各企業も方針を定められるでしょうから、そこから選定されても問題ないと考えます。」
「さて、次に行こうか。今配った書類は、申請するときの注意事項やら説明だ。個人情報の提供についても書かれているから確認していくぞ」
サラッと目を通そうとしていたらどうやら、口頭確認もしてくれるらしい。
「今後知らなかったでは済まされない項目があるからな。証拠と証人を残す意味でもここで情報を共有しておきたい。」
「なんか怖いっすね」
「まぁ、今から話す禁止事項を守ってくれれば問題はない。では行くぞ。
・武器、防具の仕組みを口外しない。
・各設備及び兵器の操作方法を口外しない。
・ミッション及び訓練の具体的内容を口外しない。
・組織の内部情報を口外しない。
・滞在国の法律を遵守する
・執拗に情報を引き出そうとする人物がいた場合。迅速に報告する。
尚、協議会より許可のある内容に関しては、その限りではない。これについて異論のある場合は教えてくれ……。」
グウゼン部長が言葉を区切ると無音の間が出来る。
「特に異論は無さそうだな。続けるぞ、申請者は、所属国に対し誓いをたてること。
・所属国に背信行為を行わないこと。
・所属国からの指示に従い、一般区域にメカニカルアーマーで出動要請を受けた時は、所属国の指示に従うこと。
・所属国の法律を遵守すること。
どうだ、大丈夫か」
「質問してもいいですか」
「いいぞ。」
「極端な話。戦争に参加するかもしれないということですか?」
「否定はしません。ただ話が逸れますが、定義を整えておきましょう。戦争というのは、いわゆる侵略戦争を指し、武力による実力行使にて、他国の領土を侵略する行為を指します。また、防衛戦争は戦争と呼称していますが定義としては自衛権の行使、もしくは自衛戦闘に当たります。国際法で問題とされているのは、侵略戦争であり、侵略戦争を行う国に対してメカニカルアーマー協議会は協力はしません。物理的に可能かどうかは、状況によりますので判別出来ませんが、侵略戦争を助力する前にメカニカルアーマーの破壊もしくは、操作不能状態にすることを基本としています。」
「破壊か操作不能ですか?」
「随分と極端な」
「それだけ我々を戦力として考える方々がいると言うことです。そして、協力的に応じることは、侵略戦争を指示する形に見えてしまい。そうなれば、他の国々にある協議会の支部が物議の的になることは火を見るより明らかとなるでしょう。我々協議会の信用も失うことでしょうし。戦力としても、第三の勢力として、その数に加えられることは、驚異の対象となり得ます。」
「デマを含む根拠の無い情報が飛び交えば、対応不能になる可能性もありますね。」
「ご理解いただけて有り難い。情報は信用の本質ではないとしていますが、正しい情報であれ、間違った情報であれ、正しいことの確認、裏付けに扱われます。疑わしいものには触れないとか、信用しないというのは、自己防衛としては素直でしょう。ですが、その相手が国となったとき、我々は行き場を失うか、無茶な交渉の場に立たされる可能性が高いのです。」
「兵器として使用出来るからこその弊害ってやつですか」
「そうなりますね。逆に自衛権の行使、自衛戦闘に関しては率先した協力を行います。国を味方につけ、国民の支持を受ける立場であり、何よりも我々は平和であることにより成り立っておりますので、一日でも早い安定を常に求めます。なので出し惜しみはしません。」
「侵略戦争では協力しないこと。他国から攻められることによる自衛戦闘には積極的に協力することは理解出来たと思います。自衛戦闘に参加要請があった場合。拒否することは可能ですか?」
「拒否することは可能です。強制的に参加させることは、ほぼ無いとの見解で現状います。例えば、敗戦が濃厚となり、所属国の兵員が確保出来なくなり、協力的な友好国も無い状態となり、参加を要請せざるを得ない。そんな状態に陥れば強制的になるかもしれませんが、この状況の場合の戦闘への参加に対しては、個人的見解は控えたいと思います。ただ、メカニカルアーマーの特性上、兵器としての使用が可能であることは重々承知していただければと思います。」
「なるほど。ありがとうございます。」
「では続けようか。次は協議会の立場だ。協議会は、参加国との協力体制の下で成り立っており、また、相互協力をすることにより、日々の安定を目指すため、協議会自体に生産力並びに選手の確保や軍事力の保持を放棄し、それらは参加国に依存することで組織的役割を分ける。協議会の研究機関の資料は参加国全てに公開し、また、協議会と参加国共同の研究もまた参加国全てに公開する。ただし、研究内容の漏洩防止の観点から、軍または軍に相当する機関にのみに開示することとする。」
「これは?」
「守秘義務関係になります。どんな秘密を守るのかという意味で、とても重要になります。文面上では判りにくいかもしれませんが、参加国全てが、メカニカルアーマーリーグに関しては同じ装備を扱えるようになるという側面と、協議会に報告しない武器や防具の存在を意味していますし、それは守秘義務に値します。これは、協議会との守秘義務であり、所属する国との守秘義務と考えていただければと思います。」
「追加だが、会社との守秘義務でもある。会社の信用問題になるからな。さて、コウゾウ君からも冒頭で質問があったが、次は個人情報についてだが、公開する情報については、会社としては他社に合わせるがなるべく出さない方向で考えている。では行くぞ。公開する必要に迫られた情報以外は開示しないというのを念頭に置くが、身長体重などの身体の寸法と、運動能力に関しては、外部に極力漏らさないこと。」
「これだけですか?」
「そうですね。操作方法や操作に必要となる運動能力が漏れることを警戒していますが、それ以外に関しての要求事項は特別決められてはいません。ただ、先程も述べた通り、おすすめはしませんし、前述した内容を加味した上での個人情報ですので、この内容となります。以上をご理解いただいた上でお聞きしますが、参加されますか?」
「個人的な意見に口出ししないし、避難もしない。待遇を変えることもない。忌憚なく言ってくれ」
「周りに流されなくて良いぞ」
グウゼン部長のフォローに加えて俺もフォローを入れる。俺としては、参加することで決めているが、みな色々と考えることはあるだろう。
「僕は参加します。」
「俺も参加だ」
「参加で」
「参加します」
「私も参加で」
「全員一致ということでお願いします。」
みながそれぞれの間を空けながら回答し、最後に俺が答えるとグウゼン部長がヒカクさんに振り返る。
「会社としても、この6人を推挙します。」
「ありがとうございます。しつこい確認ですみません。過去の問題の積み重ねからですから、お気を悪くされたのなら、謝罪いたします。」
ヒカクさんは、席を立ち深々頭を下げる。そして、頭を上げると体の強ばりが和らぎ微笑んだ。
「皆様を歓迎いたします。メンテナンス担当の方々ともお話ししましたが、良き方々ばかりの様子に安堵しております。」
「メンテナンス担当というのは?」
「あぁ、先週話した昨年に協議会から抜けた会社から引き抜けた人材だ。基本的にメカニカルアーマーと共に移動してもらうことになるから、こちらにはほぼ出勤しないが、メンテナンスが行える訓練施設には常駐している。実際の訓練になったときには、合流出来るだろう。」
「そういうことですか」
「ここからは具体的なスケジュールの話を進めましょう。免許の取得や、その後の定期訓練。リーグのスケジュールなど色々とありますので」
ここまでの重い雰囲気が抜け、若干軽くなると、免許取得の手続き関連で署名したり、月に1週間は合同訓練として訓練場なる場所へ行かなければならないとか。隔月開催のメカニカルアーマーリーグ時の選手の行動について等、多岐に渡り話を聞き、この日の会議は終了した。

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