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少年たち

「なあ、もうどっか行っちまおうぜ」
「絶対ダメだよ。とりあえずご飯行ってから詳しく聞く。」
「食うのもなんかやだよ。なんでおれなんかのために鳥が死ぬの。」
「のさばってんだよ、ぼくら食物連鎖のてっぺんさ。」
「さらってくれないか。」
「勘弁してよ。運転してるのは君だし、ぼく誘拐なんてできないよ。」
「よほどのビビリだ。」
「誰だって嫌だよ。ねえそれよりどうして?レストランとは違う方向だけど。」
「どうしてだろう。おれ、このまま海で心中したいのかも。」
「もう、さっきからなんなの、ぼくは君となんか絶対嫌。」
「やさしくしてくれよ、おれのこと嫌い?好き?」
「気持ち悪いよ、今日のきみ。」
「身を滅ぼすほどの愛、今なら安くしとく。あとケーキセットもつく。」
「くっつかないで、っ、信号見て。愛なんて、腹一杯にもならない。」
「嫌だった?」
「頼むからもう、…ああ、ぼくはやがて消えるもの全部嫌だよ。綺麗事抜きでこうしてきみといられること、奇跡だと思ってるのに。」
「憎んでくれる?おれのこと。」
「止まらないで。走り続けて。もう喋らないで。どこ行ったって同じだよ。天国だって地獄だって、ぼくにとって、ぼくだってこと自体が最悪なんだから。だから同じ最悪なら、きみとが良い。」
「いやぁ、それって愛の告白じゃない?」
「一生言ってろよ。一緒にいてくれる人なら、ぼくは誰でも良かった。」
「確かなことがある。おれがお前の味方だってこと。お前の望む奇跡ってやつを、与えてんのはおれだよ。つまりこれは運命で、愛だよ。」
「寄らないの?ガソリンスタンド。」
「どうせ奇跡なんてこんなもんだよ。観念しろ。」
「肋骨が軋むほど寂しい。」
「今までもこれからも、お前は寂しいままだよ。おれたちこんなに一緒にいるのになあ。」
「あ、レストランの看板だ。」
「だいぶ遠回りしちまった。明日に備えてまずは食べるか。店員さん、おれたち2名です。」

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