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ゆべ小説

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ゆべしちゃんが書いた小説とかです。 幻想怪奇っぽくなってたらいいなあ。
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#幻想怪奇

ハンナ・ハモンドが臨終における告解で述べた奇妙な話 #7(最終章): 緑の目

ハンナ・ハモンドが臨終における告解で述べた奇妙な話 #7(最終章): 緑の目

1章,2章,3章,4章,5章,6章(前章)

神父様...、神父様。大丈夫ですか?

青ざめていらっしゃいますよ。ご気分がすぐれないのですか?
そうですか、ええ、よかった。

それからどうなったかって?
そんなこと、大した問題ではありませんわ。

あの時から、私はずっと地獄にいますもの。

地獄とは現世にいるうちに墜ちるものなのですね。
あの悪魔が言った意味がようやくわかりました。

あの後、多く

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ハンナ・ハモンドが臨終における告解で述べた奇妙な話 #6:怪物

ハンナ・ハモンドが臨終における告解で述べた奇妙な話 #6:怪物

1章,2章,3章,4章,5章(前章)

ずいぶん長く、お話ししましたね。もうすぐです。もうすぐ私の告解は終わります。

これ以上何の罪を告白するのか、とお思いでしょうね?
ですが、これから話すことが、最も重い罪なのですよ。

悪魔が消えてすぐ、私は帰路につきました。
車のラジオから私の自宅がある地域にハリケーンが迫っているというニュースが聞こえ、そういえば数日前からハリケーンの接近が報道されていた

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ハンナ・ハモンドが臨終における告解で述べた奇妙な話 #5:願い事はひとつだけ

ハンナ・ハモンドが臨終における告解で述べた奇妙な話 #5:願い事はひとつだけ

1章,2章,3章,4章(前章)

それから私は、ソフィアに部屋から出ないよう言いつけると、すぐに家を飛び出しました。
勤め先に連絡もせず、ソフィアの食い散らかし...チップの死体を片付けもせずにです。
正直、あの子が怖かった。
一刻も早くその場を離れたかった。

でもそれ以上に、何としてもあの悪魔にもう一度会わなければならないという思いが私をかりたてました。

電車を乗り継ぎ、レンタカーを借り

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ハンナ・ハモンドが臨終における告解で述べた奇妙な話 #4:もっと食べたい

ハンナ・ハモンドが臨終における告解で述べた奇妙な話 #4:もっと食べたい

1章,2章,3章(前章)

私に体が弱く学校にいけない、ということにしている、ですけど、とにかく事情を抱えた娘がいることは、親しくなってすぐにデイビッドに伝えていました。
それでも彼は構わないと言ってくれました。
私もそんなデイビッドを愛していました。

彼を休日に家に招き、ソフィアに会わせたこともあります。
デイビッドは持ち前の気さくさでソフィアを笑わせようとしてくれましたし、父親を知らないソフ

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ハンナ・ハモンドが臨終における告解で述べた奇妙な話 #3:負債

ハンナ・ハモンドが臨終における告解で述べた奇妙な話 #3:負債

前章

........................。

はい?

ああ、ごめんなさい、神父様。
少しぼうっとしておりました。
こんなに話し続けるのは初めてなんですもの。
休憩は必要ありませんわ。続けさせてください。

私はソフィアを取り戻して、それからすぐ、誰も知り合いのいない、遠くの街へ引っ越しました。
安い賃貸の家を見つけて、病弱で学校にいけない娘を抱えるシングルマザーという体で暮らし

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ハンナ・ハモンドが臨終における告解で述べた奇妙な話 #2:ヴァルプルギスの夜

ハンナ・ハモンドが臨終における告解で述べた奇妙な話 #2:ヴァルプルギスの夜

前章

それから、悪魔は4月30日の夕方、日が沈む頃に、ソフィアの墓でまた会おうと言って消えてしまいました。
ええ、消えたのです。闇に滲むように。

悪魔が消えてしまうと、私はすべて幻覚だったのではないかと思いました。
馬鹿げた夢だと。
しかし、私はその馬鹿げた夢に死にものぐるいですがりました。

4月30日までの数ヶ月間、約束の日を今か今かと待ちかねて過ごしました。
希望を得て再び活力ある様子を

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ハンナ・ハモンドが臨終における告解で述べた奇妙な話 #1:告解

ハンナ・ハモンドが臨終における告解で述べた奇妙な話 #1:告解

ああ、神父様、よくいらしてくださいました。
どうか、どうか私の意識がまだ鮮明なうちに、告解をさせてくださいまし。
私の犯した罪、これを誰かに打ち明けぬ内には、とても死ぬことなどできません。

私の犯した罪、それは悪魔と取引をしたことです。
いいえ、比喩ではありません。私は本当に、本物の悪魔と取引をしたのです。
面食らった顔をなさって、信じてはおりませんね?
かまいません。死に際に蒙昧した老人の戯言

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