水曜日の湯葉 #32 新刊発売前は大体こんなかんじである

大学入学時に買った財布をいまだに使っている。小銭入れの裏に小さなポケットがある。最初はここに学生証を入れ、のちに職員証を入れたのだが、今はなにも入っていない。身分を示すカードを僕はもう何も持っていないのだ。仕方ないので、特急に乗るときだけ特急券をここに入れることにしている。今の身分は「ときどき旅人」である。

7月13日　水

note にメンバーシップ機能ができました、という通知が来た。現行の有料マガジンに比べて手数料が半分になるのは魅力だが、「コミュニティ作り」という雰囲気が性に合わないのと、あとメンバーが公開されてしまうのはさすがに僕の方針に反する気がする。（設定で非公開にできるのかな）

旅行記のゲラ（再校）をやる。「これはネット向けの表現であって印刷物にはふさわしくないな」と思った点をガリガリ修正していく。また文章のスタイルが古臭いなと感じた点も現代風に書き換えていく。おのずと昔書いた記事ほど修正点が多い。

早川書房のセールで買った『ファスト＆スロー』を読む。人間の脳には直感的な「システム1」と熟慮に基づく「システム2」のふたつの思考モードがある、という話。面白いのだがもう少しマシなネーミングを付けるべきでは。ネットスラングの「脊髄反射で〜と言う」みたいなのは典型的なシステム1だが、これはそもそも医学的に正しくない。マシュマロ実験が取り上げられていることに時代を感じる。自分の中では代表的な「否定された心理学実験の例」である。

7月14日　木