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健康を濁らせると原稿になる ◆ 水曜日の湯葉92[9/6-12]

連載中の『幽霊』を読み返し、1話ごとの要約と書籍化時の改稿方針を書いていく。前々からやろうと思っていたのだがようやくチャージがたまった。改稿方針がまとまると「このとおりに改稿できればかなり面白い小説になりそうだ」と思えた。うむ。

連載はすでに1年にわたっており、その中には調子がいい時期と悪い時期がある。僕はもともと「原稿が書ける時間帯」というのがあって、しかもそれが定期的に変動する。戦闘中に弱点が変わるFFのボスみたいなやつ。昼間であればいいが、ひどい時は深夜3時頃になるので、レッドブルを入れて目を血走らせながら書いている。たいていは体調を崩す。

全体を読み直した印象としては、調子がいい時期にササッと書いた部分と、深夜に必死に書いた部分で、とりたて文章の質に差がない。なんだか残念だ。楽に書いた部分のほうが良いものであってほしかった。「苦しい時は無理しないほうが、結果的にいいものができるよ」と言ってほしかった。

SNS が普及し、作家の人間的側面が社会的に認知されたことで、読者が作家の健康を心配するようになった。それ以前のインターネットは「冨樫仕事しろ」というように健康など全く考慮されない原稿製造機扱いだったが、今では人気漫画の休載宣言が出ると「ゆっくり休んでください」と言われる。復帰後に読者が残っている保証はないが、礼儀上はそう言う。

ただ現実問題として、健康を賭けないとできない仕事はそこそこ存在する。そもそも人間の寿命は有限なので、時間のかかる労働はすべて生命を削る行為だ。だから「今が生命の使い時か?」とみんな悩んでいる。


星海社から青島もうじきさんの『私は命の縷々々々々々』をご恵投いただいた。『異常論文』アンソロで面白いのを書いていた方として覚えていたが、初の長編を出したらしい。締切のアレが片付いたら読もう。

あっ表紙がシライシユウコだ、いいなあシライシユウコ


9月6日 水

家のまわりの田んぼが収穫期に入った。農機が騒がしいので町のカフェに行って原稿をやる。埼玉県は意外と田んぼが多い。県の面積の10.5%が田んぼである(全国平均は6.3%)

ふと「コメの生産量が少ない都道府県ってどこなんだろ」というのが気になり、調べたら47位が東京、46位が沖縄だった。多摩にはそこそこ農地を見るのでコメも作ってると思ってたが、あれは野菜が中心らしい。東京都でカロリーベースの食料自給率出したらすごいことになる。そんなものを気にする都民は見たことがないが、都道府県を区切る巨大な壁がとつぜん出現したら東京が真っ先に地獄になることは間違いない。

ゼロ知識証明についての本を読む。パスワード認証はサーバー側にパスワードについての情報を保存するので漏洩リスクがある。そこで相手側に「このユーザーはアクセスが許可されている」という以外の知識を与えずに認証したい。それがゼロ知識証明である。なるほど。モチベーションはわかるが「ゼロ知識」の定義がよくわからない。

  • ログインパスワードを平文で保持するのはゼロ知識ではない ← わかる

  • パスワードのハッシュ値を保持するのもゼロ知識ではない ← そうなの?

  • 離散対数問題を使えばゼロ知識証明ができる ← 離散対数問題が解けないことを安全性の根拠にするのって、ハッシュ値と同じことでは?


9月7日 木

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