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自分の歴代小説執筆環境

小説家をやっていると「執筆に使うツールを教えてください」と頻繁に聞かれる。おそらく小説家志望の若者が「自分は形から入るタイプなので、プロの使っている道具を知りたい」というつもりなのだろうけれど、正直なところ結構困る。僕の使うツールがちゃんと確定していないからだ。

たぶんこの聞き手は「執筆期間が2か月なので、最初の1週間で資料集めをして、次の1週間で登場人物とプロットを固めて、ここで一旦編集さんと打ち合わせして、本編を1か月で執筆、推敲は何日間を見込んで……」みたいなワークフローがあり、それぞれにしかるべき専門的ツールが存在すると思っているのだろう。実際プロの仕事というのはそうあるべきだ。

ただ、僕は基本的にその場のノリだけで生きているので、なにかネタを思いついたら Google Keep みたいなメモアプリに走り書きをして、暇なときにそれをちょっと書き足して、ある程度育ったら本格的な執筆環境に田植えして、出版社から依頼が来たらそういう「在庫」の中から間に合いそうなものを見つけて完成させるというかんじで、ワークフローもスクラップアンドビルドなので、「こうやって作っています」とは言えないのである。

仕方ないので、僕の幼少時からの執筆環境の変遷を紹介しようと思う。これを読んでいただければ「形から入りたい若者」に伝えるべきことが伝わるはずだ。

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