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カマボコ人間と獣たち ◆ 水曜日の湯葉115[2/14-20]

2月14日 水

頓挫した案件の反省会が1件。といっても僕はほぼ何もしてないので、「板挟みの人は大変そうだなあ」と思いながら聞いていた。小説家はたいていの案件で一番端っこなので、板に触れても挟まることはない。カマボコみたいな役回りだ。カマボコ人間。脚本家などは相当な挟まれ耐性が要求されるのだろう。板ワサ人間。お、カマボコ縛りで人間の類型パターン作れないかな。長いものに巻かれるナルト人間、とか。

「人間を類型化して偏見を押し付ける」は人類の基礎的娯楽のひとつだ。最近だとMBTI診断だが、ほかにも血液型とか動物占いとか右脳派・左脳派みたいなものがなんの根拠もなく無限に作られている。おそらく今後も永遠に新しいものが生まれ続けるだろう。他の基礎的娯楽としては「他人のピンチを安全圏から眺める」などがあるが、類型化に関しては他人だけでなく自分にも適用されるところが興味深い。

そういえば新入社員をその年の流行り物と無理やり結びつけて「今年の新人は◯◯型だ」と語る謎の組織あったな。調べてみたら産労総合研究所というところだった。2023年は案の定「AIチャットボットタイプ」で、その前が「二刀流タイプ」、その前が「ソロキャンプタイプ」である。乱暴すぎて何の価値もないところが逆に面白い。「今年の漢字」とかに連なるシリーズだ。


マシュマロでバレンタインの思い出を聞かれた。なんかあったかな……と過去ツイートを検索したらこんなのが出てきた。

バレンタインでチョコ貰った男子が「俺の時代が来た」と言うのを見て「三種の神器かよ」とツッコミを入れたことがあるのですが、あんま面白くなかったなと今では反省しています。

2021年2月4日のツイート

これについて解説したい。僕が子どものころ、ちょうど将棋の羽生善治が社会現象を巻き起こすレベルで爆勝していた時期である(いまの藤井聡太くらい)。その頃の漫画で「まさに羽生時代だ」「いや平成時代だろ?」とツッコミを入れる回があり、それを読んだ僕は「たしかに時代の名前になれるのって天皇だけだよな」と思ったのである。そしてチョコを貰った男子が「俺の時代が来た」と言うのを見て「天皇になったつもりか」と言おうとしたのだが、直接的に言うのがはばかられた(この判断も謎だが)ので「そのチョコが即位に必要な三種の神器なのかよ」という謎にひねった言い方をしたわけである。……あらためて思い返しても自分史上ワースト5に入るリアクションだったと反省している。


2月15日 木

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