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時速何キロで走れば、当たる雨粒は2倍になるのか?

雨の多い季節になった。僕の乗っている軽ワゴン車はフロントガラスが垂直に近いので、停車時はあまり雨粒が当たらず、ワイパーを止めても支障がない。ところが信号が青になって「大して降ってねえな〜」とアクセルを踏むと、すさまじい勢いで雨粒が飛んできて一気に視界が曇る。とくに夜間はこのギャップがかなり怖い。

雨粒の落下は意外と遅く、時速25〜30kmほどしかない。このため雨の中を車で走るのは、浮いている水滴に体当たりするのに近い。当然、速度を上げるごとに衝突頻度は上がっていく。

これ自体は感覚的にわかるが、実際にはどのくらい増えるのだろう? ということで今回は、車の速度とフロントガラスに当たる雨粒の量は、どういう関係にあるのかを計算してみよう。

話を単純にするために、雨粒はすべて一定速度で垂直に落下するものとする。この場合「次の1秒でフロントガラスに当たる雨粒の分布範囲」は、こんな平行四辺形の中に収まる。

速度を上げるほど平行四辺形が横に伸びるので、そのぶん面積も増える。雨粒の密度が一定とすれば、この平行四辺形の面積がそのまま当たる雨粒の量になる。

フロントガラスの面積を $${S}$$, フロントガラスの角度を $${\theta}$$, 車の速度を $${v_c}$$, 雨粒の速度を $${v_r}$$ とすると、単位時間 $${\Delta t}$$ 以内に当たる雨粒分布範囲は $${(v_r \cos\theta + v_c\sin\theta)S\Delta t}$$という形になる。

このカッコ内 $${v_r\cos\theta +v_c \sin\theta}$$ が、単位時間・単位面積あたりに当たる雨粒の数といえる。

今日のまとめ

これは車速 $${v_c}$$ を変数とすると、傾き $${\sin \theta}$$, 切片 $${v_r \cos \theta}$$ の1次関数である。

実際のデータを当てはめてみよう。雨粒の速度は $${v_r = }$$ 25km/h とする。日本一売れてる軽自動車こと N-BOX のフロントガラスは $${\theta = }$$60° 程度なので 13km/h で雨粒が2倍になる。徐行くらいの速さでそんなに変わるのだ。高速道路で 100km/h 出そうものなら7.9倍だ。そりゃ視界もすごいことになる。

N-BOX(Honda公式サイトより)

また流線型に近い車であれば$${\sin \theta}$$がゼロに近づくため、速度の影響をあまり受けない。たとえば新型プリウスはこれが20°しかないので、69km/h まで加速してようやく2倍である。ただ停車時は N-BOX の2倍雨が当たる。

プリウス(トヨタ公式サイトより)

逆に、この理論は雨粒の速度を推定するのにも使える。$${\theta = }$$45°の車であれば$${\sin\theta = \cos\theta}$$であるため、雨粒と同じ速度で走れば当たる雨が停車時の2倍になる。つまり、雨音のリズムが倍速になった瞬間に速度計を見れば、それがそのまま雨粒の速度ということになる。リズム感に自信がある方は試してみてはいかがだろうか。


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