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海でなく、陸地の終りが見たいから ◆ 水曜日の湯葉128[5/15-21]

5月15日 水

「すみません、スケジュールの都合でその案件はできません」というメールを1日で2回送った。最近ものすごい勢いで依頼が来るが、新連載の準備が佳境なのでほとんど受けられない。連載が始まればもっと忙しくなるだろうからなおさら受けられない。

忙しさとは別に、ちょっとずつ短編の仕事を減らさねばと思っている。理由はシンプルに在庫切れのため。僕は経験したことしか書けない作家だが、そろそろインプットに対するアウトプットが過剰で経験が尽きつつある。前書いたような話ばかり書いてる、という印象になってきた。たとえば主人公に子供・大学生・研究者を禁止されたらかなり厳しい。僕はその3つしか経験がないので。

あと金銭の問題もある。短編は1つ1つ手作りの職人芸だが、連載は物語の量産ラインを体の中に作ってひたすら回し続ける工業だ。ものすごい場所や労力を使うが生産効率は高い。デビューしてから8年、「貯金が増える時期」はほぼ「連載してる時期」である。

小物が挟まっていなければダブルスイカにも届き得た

何もかもが面倒になってスイカゲームをやったら新記録が出た。繰り返しに見える作業も執拗に継続すればやがて新境地に至るということかもしれない。などのように物事に意味を見出しすぎるのはよくない。


5月16日 木

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