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「静かな退職」を選ぶ若者が増える理由

ユーシロです。

新入社員が入社して1ヵ月も経って、これからなのに「静かな退職」という言葉が話題になっています。

2022年にアメリカのキャリアコーチが発信し始めた「Quiet Quitting」の和訳で、企業を辞めるつもりはないものの「出世を目指してがむしゃらに働く」ことを選択しないあり方であり、最低限やるべき業務をやるだけで、積極的に仕事に対しての意識がないことが特徴とされています。

今回は、こうした「静かな退職」を選ぶZ世代が、会社や仕事に対して冷めている5つの要因について述べていく。

①「失われた30年」を作った当事者ではない

日本の経済は1990年代のバブル崩壊から低迷し続け、すでに30年以上が経過して、Z世代にとっては生まれる前のことであり、それを「景気回復のために頑張れ!」と言われても「アンタが頑張れよ」という思いが本音だろう。

むしろ、停滞した経済を何ともできず、ここまで負の遺産を大きくしてしまった先輩世代から「頑張れ!」と言われることは、Z世代が社会に冷める最初の要因だろう。


②旧態依然としたルールや縛りが多すぎる

実社会に出て、どんな意味があるのかわからない、謎のビジネスマナーやビジネス慣習に首を捻ったZ世代は多い。実際、日本の企業社会は何かをやろうとしても、制限・制約が壁になることが多すぎる。

特に困るのは、上司や先輩から「上手くいかなかったやり方や慣習」を「今まで通りやれ」と言われることだ。例えば、「結果は出せ。ただし、今までのルールや慣習は守れ」などと言われることだ。

結果はプロセスによって生み出されるもの。だから、結果を出すためには、ルールや慣習に縛られずに必要なプロセスを構築していく必要があるにもかかわらずだ。


③上司や先輩も冷めている

ここ1、2年で概念が広まった「静かな退職」だが、指示通りにやるべき業務をやっても、それ以上積極的に打ち込まない従業員は元から大量にいたはずだ。

しかも、社会が停滞すればするほど、手本になる仕事に熱心な先輩や上司はどんどん減ってしまう。

「静かな退職」をしている先輩が増えると、ドミノ倒しのように若手や新しい従業員も「静かな退職」を選びやすくなるのは必然であり、急に発生したわけではなく、徐々に蓄積されて発生しているのだ。


④お金を得るための方法が「サラリーマン一択」ではなくなっている

仕事に冷める要因の1つに、「サラリーマンがお金を稼ぐ1つの手段に成り下がった」ことも一因だと言える。つまり、冷めているのはサラリーマンとして働いている職場だけで、副業ではイキイキと働いている人が多い。

高度経済成長時代、サラリーマンになることは「生計を立てる基盤」だったが、その「王道一択」が崩れている。本業とは別で個人として行う「副業」もあるし、NISAなどの「資産運用」という手もある。

「仕事より大事なものがある」という価値観の広がりが、拍車をかけているかもしれない。


⑤「新卒一括採用」だと適性や仕事観を合致した仕事選びが不可能

Z世代が仕事に冷める大きな要因は「新卒一括採用」という仕組みにあるのではないかと考える。新卒を一括で採用する仕組み自体はいいのだが、その後の人材の移動が少ない点が問題だと感じている。

学生時代に受けられるキャリア教育はいまだにほとんどなく、インターンがあっても選考目的になっているため、実務経験を積むことができないのが現実で、若者たちは「実際に企業で働いて自身の適性や仕事感を確認する」経験がほとんどできないのだ。

新卒一括採用のレールに乗って就職はするが、自分の適性や仕事観と合致した仕事選びをしたわけではないので、ミスマッチが起こりやすい傾向があるため、就職活動を乗り越えたのに「こんなはずじゃなかった」という思いになると、やることはやるが意欲的には働かないという冷めた選択になるのも当然のことだ。


私たちはZ世代にとっての仕事の目的は「お金を稼ぐ」だけではなくなっていると、認識を新たにすることだ。

SNSなどを通じて「自分らしさ」を発信しやすくなった中、今の若者たちは自己表現することに慣れてきている。そして、仕事に対する認識も「お金を稼ぐこと」に加えて「自己表現」を求めるように変わってきている。

だから、お金を稼ぐ以外の働く理由、つまり「やりがいを見出せる」という会社に生まれ変わっていかないと、若手人材は採用できなくなっていくだろう。「お金を稼げるんだから働くはずだ」という考えでは、若手の採用は難しいし、採用した人材も「静かな退職」を選んでいくことになる。

「静かな退職」が広まったことは、社会の仕組みを見直すいい機会なのかもしれない。

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