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エレベーターでのトラブル

人間の心を学ぶ出来事があった。

JR駅のエレベーターに乗った時のことだ。小柄なおっちゃんと乗り合わせたのだが、ドアが閉まる前に中年女性も乗り込んできた。その女性はゆっくりとした動きだったが、その理由はすぐにわかった。

女性は歩行用の杖をついていたのである。

しかし、3人全員が乗ったにも関わらず、閉じるボタンを誰も押していなかったのか、ドアは数秒間開けっぱなしだった。

すると、おっちゃんが女性に対し、「ドアを閉じろよ!」と怒鳴りつけた。女性は怯えた様子で「すいません」と小声で謝った。私は、驚いて女性と顔を見合わせた。この嫌なおっちゃんを諌めようかと思った。

しかし、これまでの経験から思い直す。

「すでに問題は過ぎ去っている。おっちゃんを諫めるのは、自分の正義感を満たしたいだけではないか。トラブルになってもつまらない。この女性も困ってしまうだろう」

そこで、別の方法を取ることにした。女性がエレベーターを降りる時にドアを開け、女性にだけ聞こえるように「さっきの謝ることないですよ」と声をかけた。女性の心が軽くなればと思ったのだ。

すると女性は目を見開き、「あいつ(おっちゃん)がドアを閉めれば良かったのにね!!先にいたんだから!!」と、怒りを露わにしたのだ。

私は、女性の予想外の反応にビックリした。女性は、嫌なおっちゃんよりもさらに激しい口調だった。私は学んだ。人間、しおらしくしていても、心はわからないものだと。

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