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その患者さんの回復は自然回復?それともリハの成果?

今回は、リハを受けられている患者さんの機能が順調に回復していったとき、その回復は本当にリハの成果なのだろうか、はたまた、ただの自然回復なんじゃないのかといった事についてお話します。

この疑問は、特に回復期の患者さんを担当したことがある療法士なら、ほぼ全員が一度は抱いたことがあるのではないでしょうか。
この疑問に対する答え方を僕は明確に持っています。

昔、僕がまだ2、3年目くらいだったころ、とある小さな学会に参加していた時の話です。その時はメインの会場で症例報告が発表されていたのですが、その発表の質疑応答の時に、フロアから「今回の成果は、本当にこの介入の成果ですか?自然回復なんじゃないんですか?」と質問がありました。僕はそれを聞きながら、意地悪な質問するなーこのおっさん、と思っていたのです。(確かに意地悪そうな顔のおっさんでした)

しかし、今になって思い返してみれば、このおっさんの指摘は的を得ていて、こと臨床研究のような介入の成果を外に発信するような場では、この問いに対して明確に答えられる必要があるのです。

これについては、僕たち臨床現場の人間においても同じ感覚が必要だと思っています。研究発表のような明確なエビデンスを示す必要は全くありませんが、少なくとも介入している療法士本人の中には、患者さんの回復について、自然回復の影響なのか、リハの成果なのかについて確かな考えをもっておくべきだと思います。

なぜなら、その考えをもっておくことで、目の前の患者さんの回復に自分の介入がそれほど貢献できていないことを知り、より良いものに介入方法を改変していけるからです。

ここからが本題です。

では、患者さんが順調に回復していっているとき、その回復が自然回復によるものなのか、リハの成果なのかを見分ける方法は何なのか。
ずばり、一発の介入による即時的な効果です。(ずはりは久しぶりに使いました。)

つまり、一回のリハの前後で、確かに患者さんに変化がある場合、それを繰り返しているリハ期間での回復は、リハの成果だと考えられそうです。逆に、介入の即時的な効果が感じられないリハを繰り返しているのに、患者さんは確かに回復していっているとき、その回復はリハの成果ではなく、自然回復、もしくはリハとは別の場所での患者さん自身の頑張りによるものの可能性が高いです。(0はいくら積み重ねても0ですから。)

注意点として、介入の即時的な効果とは、この場合、目に見える効果、数値化できる効果だけを指しません。必ずしも、ROMが改善したり、歩容が改善したりしていなくても、リハ前に比べてリハ後で、患者さん自身が自分にとって必要な運動を理解していたり、自身の回復に対して意欲的になっていたりする場合もリハによる即時的な効果と言えます。これらを積み重ねることで、患者さんの回復の角度は大きく変わってくる場合があります。

整形疾患の患者さんは、受傷部の炎症反応が治まっていくとともにROMは改善し、筋の出力は大きくなっていきます。脳梗塞後の患者さんは、ペナンブラが解消され、病棟で体を動かしている間に神経系が再組織化し、運動麻痺が軽減していきます。このように発症後、受傷後の患者さんは、ほっておいても勝手に回復します。

これらのほっておいても勝手に回復する患者さんがリハを受ける意味を、僕らがどれだけ具体的に提供できているのか、それを見極めるポイントは、毎回のリハで即時的な効果を出せているか、ということだというお話でした。

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大雨の日だったけど、いつもの駅は綺麗でした

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