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股関節の人工骨頭置換術と人工関節置換術とのリハの違い

今回のテーマは、股関節の人工骨頭置換術(BHA)と人工関節置換術(THA)では、リハの進め方、考え方が違うということについてお伝えします。この前、脳卒中やったんで、次は整形疾患について書いてみます。

この2つの手術は、両方ともリハの現場ではとてもよく見かけるものです。どちらの手術も股関節を損傷し、損傷した部分を人工の物に入れ替えるものです。これらの手術を受けられた患者さんは、下肢の支持機能が低下し、歩行障害を抱え、また元の様に歩けるようになるためにリハを受けられます。

この2つの手術の違いは、股関節の一部(大腿骨頭)を入れ替えているのか、股関節の全部(大腿骨頭と臼蓋)を入れ替えているかです。(どやっ)
その手術種類の違いは、当然、股関節周囲の筋や組織の侵襲の程度の違いになり、術後の筋力の回復に影響します。

しかし、その後のリハをどう進めていくかの視点に立ったとき、この2つの真の違いは、術式や侵襲の程度とは、別のところにあります。

人工骨頭置換術を受けられる患者さんの多くは、転倒による大腿骨頚部骨折が原因です。この方たちの多くが、転倒する前日まで、足に痛みもなく普通に歩いていた方たちです。ある日突然、転んで骨折してしまい、手術するはめになってしまったのです。

一方、人口関節置換術を受けられる患者さんの多くは、変形性股関節症の進行が原因です。この方たちは、手術するまで、長い間痛い思いをしながらなんとか歩いていた方たちです。痛いながらも買い物や仕事に行き、だましだまし生活していたのですが、さすがに歩けなくなってきて、ようやく手術に踏み切ったのです。

つまり、手術に至るまでの病歴の長さが圧倒的に違うのです。

長期間、股関節の痛みを持ちながら歩いている変形性股関節症の方は、いつしか、損傷側への荷重を避け、股関節の動きを出来るだけ使わない歩き方となっていきます。すると、必然的に損傷測の筋力は低下するとともに、股関節は拘縮していきます。また、左右非対称の荷重は体幹部のアライメントの非対称に繋がっていきます。こうした歩き方が習慣付いてしまったあとに、損傷側の股関節の関節部だけ新品に入れ替えたのが、人工関節置換術後の患者さんです。(お医者さんの多くは、傷んだ股関節を直したんだから、元通り歩けるでしょって思ってます)(医者じゃ治せないとこを俺が治すぜ)

だから、人工関節置換術後の患者さんのリハでは、術前、どれくらいの期間痛いのを我慢してどんな歩容で歩いていたのか、その影響が股関節部だけでなく、その他の離れた部位にどれくらい影響しているのか、がめちゃくちゃその後の回復に影響します。僕の印象では、痛いのを我慢してた時間が長いほど、リハの難易度は高いです。(誰かそんな論文知らないですか)

そして、そんな長期間かけて、代償的な歩行を獲得してしまった患者さんが元通りに歩けるようになるには、筋トレと関節可動域練習と歩行練習だけではやっぱり無理で、自身の身体の捉え方を再学習するアプローチが必要です。僕らが、人に言われないと自分では気づかない姿勢の癖を、スクワットとかストレッチとかで、いきなり治すのは無理なのと一緒です。(僕は、右肩が下がってます。。)
(それらについてのもっと具体的な話はまた今度にします。)

逆に、ある日突然骨折して手術した人工骨頭置換術後の患者さんのリハは、特に手術に大きな問題がなく、問題となる合併症などもなければ、そんなに難しくないと思っています。筋トレして、関節可動域練習して、荷重練習して、歩行練習すれば、ニコニコ笑顔で上手に歩いて帰っていきます。(この場合、転倒をもう2度としないことが課題ですが、その話もまたいつかします)

まとめると、股関節の人工関節置換術後と人工骨頭置換術後の患者さんでは、術前、痛みを抱えて生活していた期間の長さが違い、人工関節置換術後の患者さんは、その期間で歩行全体に与えた影響を考慮してリハを進める必要があるということです。

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僕の職場を上から見渡した景色
(この世の終わりみたいな風景だけど、しあわせの村っていいます)

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