よし

モットーは、部屋のすみで死んだふり。 明日が怖くなくなりたい。

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モットーは、部屋のすみで死んだふり。 明日が怖くなくなりたい。

最近の記事

まだ見ぬ郷愁 ヴェネツィア

ヴェネツィア、ヴェニス。 小さなころ、両親の貧乏新婚旅行の話をところどころ昔話のように聞くとき、一番よく耳にする街だった。数十年前、いまより海外旅行がずっと高かったころ、イタリア、スペイン、ポルトガルを電車で乗り継ぎながら回ったようで、「当時お金がなかったからどの写真を見ても同じ服を着ている」という嘆き節がはさまりつつ、ヴェネツィアの運河や街並みの美しさを必ず話していた。マドリッド、バルセロナ、ほかにもポルトガルを回ったようだけれども、両親に鮮烈な印象をのこしたのがヴェネツィ

    • ポストをのぞいて

      学生のころ、海外に留学をしていた。メールやLINEで「手紙を送ったよ」と言われると、すぐに寮のポストをのぞきにいっては友人に笑われていた。エアーメールだから、昔のように1か月以上かかるわけでもないけれど、それでも1週間くらいはかかる。 半日以上の時差があり、言葉に苦労する日々の中で、毎日LINEをやり取りしている家族や当時の恋人からの手紙であっても、すぐに読めるメッセージとは違うなにか心を浮き立たせてくれるものがあった。 * 実家に暮らしていると、私宛の手紙は、食卓の私の

      • 「かわいくない」女の子 『秘密の花園』

        子どものころ、お姫さまが出てくるお話を好きになれなかった。お姫さまは生まれたときから美しくて、心根が優しくて、だれからも愛される存在だと決まっていたから。 それになんでお姫さまとは素直で優しい女の子、と相場が決まっているのに、ひとの言いつけをさっぱり守らないのだろう。とても不思議だったが、これはまた別の話。 * 子どものころなぜこの本が好きだったのだろう、と大人になってふと考えたとき、思い当たったのは『秘密の花園』の主人公がたぐいまれに「かわいくない」からではないか、とい

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