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川口クルド人問題取材|日本人の多くは非白人差別に無自覚

産経新聞が3月19日に埼玉県川口市のクルド人たちが日本人ジャーナリストの石井孝明氏を提訴した件を報じた。

X上では岩本拓也弁護士についての誤情報が飛び交っている。だけど、実際の岩本拓也弁護士はXで書かれている「自由法曹団所属」ではなく、同姓同名の別人だ。

私は親権問題で子どもを連れ去られた時にお世話になっているので、岩本拓也弁護士はその時の代理人で、今でも取材をさせてもらったりと交流がある。提訴の弁護を受ける件は事前に聞いて知っていた。

政治的に複雑な背景があるので、岩本拓也弁護士の協力を得て、誤報は流さないよう慎重に進めたいと思っている。扱えるかどうかはともかく、説明を聞きたいと言ってくれ現地取材もしてみようと言ってくれた担当編集さんに感謝している。


語学学校時代に感じた日本人の非白人差別

私は外資系企業への転職をしたくて、集中的に勉強をしたくて、全日制の語学学校に1年近く通ったことがある。日本人同士も英語、課題を先生に聞くにも英語、課題の論文も全て英語……という環境だったので、ほぼ留学と変わらない環境で過ごした。

留学も考えていたけど、尊敬してたカナダ人の教師ジェイソンの「東京にいたら外国人なんかいくらでもいるしわざわざお金かけて留学する必要はない。東京でも英語は話せるようになるよ」の一言で日本で英語をマスターした。

ジェイソンとは空き時間に色々なディスカッションをして、中には差別問題なんかも含まれていた。私の語学力は飛躍的に伸びたし、1年後には外資系企業の面接でベラベラ話せるレベルにはなった。

在学中にできたインド人の恋人

授業が終わった後も会話したいと思っている中で知り合ったのが当時の恋人のインド人クリシュナだった。クリシュナはMBAも取得しているニューデリー出身のエンジニアで日本企業に勤務するベジタリアンだった。

今、考えると、インド人も生活習慣が違う(部屋に集まってパーティーするの好き)ので近隣トラブルにならないように、会社側はインド人の社員は全員、社員寮に暮らすというシステムにしたのだろう。クリシュナは社宅住まいをしていた。

白人大好き日本人

東京では、六本木あたりのクラブで白人男性(一部黒人男性も)モテモテだ。語学学校でも似たようなもので、白人の講師はよく「How to seduce Japanese women(日本人女性の口説き方)」という本で勉強?して熱心に生徒を口説いていた。

辞書みたいなその本には「kawaii-ne」「suki-dayo」「aishiteru-yo」なんて言葉がのっていて、そんな言葉で誤魔化されるな日本人女性!と私は怒りを感じた。

だから、そもそも私は白人男性って、アジア人を差別していると思っていた。

インド人の彼とデートしていて日本人が差別的だと知る

語学学校のメインはイギリス人・アメリカ人の白人男性講師がメインだった。だから、私の彼はインド人だと言うと、「何で英語を勉強するのにインド人と付き合うの?」と言われたし、中には露骨に「褐色のやつとよく付き合うね」という人もいた。

クリシュナは小さい頃から母国語ヒンディー語も英語も話していたので、ネイティブとは言えなくとも、英語で日常的に話す上に日本語も多少理解はできた。何より明るくて大らかだった彼の人間性が私は好きだった。

だから、白人は差別的だ!私だってアジア人で有色人種だ!という思い込みは強くなった。

でも、実際に街中でデートしていると、その数倍は酷い差別が待ち受けていた。日本人からの差別だ。

わざとぶつかってくる男性がいて「この黒人(彼は褐色だったけど)が国に帰れ!」「日本人の女と付き合ってんじゃねー!」と通りすがりに言われることなんかザラだったのだ。

日本語が得意ではないクリシュナに伝えるのをためらったけど、英語に訳して伝える。自分がぶつかられる理由に落ち込んだ彼だった。

カナダ人の講師に思いをぶちまける

毎日のようにディスカッションしていたカナダ人白人男性ジェイソンに
「なぜ白人男性は有色人種を差別するの?」「なぜ世の中に差別なんかあるの?」と今思うととても若いなという質問をした。

ジェイソンは笑って答えた。「白人が日本人を差別するっていうけど、日本人はどうなの?僕は日本に20年暮らしているけど、いまだに『白人だ!』って指を指されるよ?日本人のどこが外国人を差別してないっていうんだ」「僕が歩いているだけでじろじろ見るよ。そこに遠慮なんかないよ。外人だ!って」「ゆうが経験したように、インド人の彼と歩いていると日本人がぶつかってきて文句を言うんでしょ?日本人は同じアジア人を差別しているじゃないか」「どこの国でも人種でも差別する奴はするし、こうやってディスカッションが成り立つ相手もいるんだよ」と。

当時の私は雷に打たれたみたいな気持ちになった。周りに語学学校のクラスメートたちだって、白人外国人講師と「寝たい」と言っている子もいれば「青い目が最高」と言っている人もいた。私は街中でじろじろ見た経験はないか?私にだってある。ただ、無自覚なだけで。

日本企業でいじめに遭って国に帰ったクリシュナ

恋人クリシュナが私を社宅に入れていることが会社で問題になった。そこでクリシュナは「だったら、一人暮らしを認めて欲しい。僕は彼女と真剣に付き合っている」と主張した。だけど、日本企業の答えは「インド人のくせに日本人の女と付き合うから痛い目に遭うんだ」であって、1人暮らしなんか認めることはなかった。それどころか、「生意気だ」と言われて仕事で嫌がらせをされるようになる。

うつになった彼は「シンガポールに一緒に駆け落ちしない?」と言ったけど、当時の私には異教徒で、育った環境が全く違う彼と、知らない国で新生活を送る勇気なんかなかった。結局、彼は帰国した。「君だけが僕を差別しないで向き合ってくれた日本人だ」という言葉を残して。

あれからもう10年以上経つけれど、日本にいて、日本で育った自分も差別の対象になった経験を忘れられない。

だから、私は川口クルド人問題を無関係なことと思えない。民族差別につながるような発言を看過できない。

慎重に取材を進めてどこかで公開したいと思っている。


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