可哀想って思わないで
3年間、無遅刻無欠席で登校したこの高校に来るのも
あと片手で数えられるくらいになった。
もう授業なんて無いただの登校日。
なんなら午前中だけ。
席に着いて考えるのは
今朝も超寒かったなぁ、なんて。
好きでも嫌いでもないこの校舎とももうお別れって思うと
なぜかやっぱり少し寂しくなるもので。
今までの人生、短いながらも何度か卒業というものを経験してきたけど
この感じには慣れないな。
せっかくだから、長かったのか短かったのか知らないけど
3年間の高校生活を振り返ってみようかな。
今思ってみると、自分が小中学生の頃に憧れてた
理想の高校生像と現在とは全然違くて。
制服を可愛く着崩したり
アルバイトしたお金でお洒落したり
友だちと色んなところに出掛けたり。
私もそんな高校生活を期待してたんだけどなぁ。
いざ入学すると、待ってたのは理想とかけ離れた校則。
女子は肩より長い髪は結ぶ
男子は耳に髪がかからないように
香り付きの整髪料は禁止
ヘアカラーなんて以ての外
制服の着崩し禁止
アルバイトは3年生の卒業1ヶ月前まで禁止
私にとって訳の分からない校則ばかり。
私が理想に思っていたキラキラ女子高生って
ほんとに理想だっただけで、ドラマとか映画の見すぎだったのかな。
特に部活にも入らなかった私は、学校が終われば真っ直ぐ帰路につくしかなかった。
田舎だし、放課後に遊ぶような場所もないし
そもそも、友達も少ないし、その子たちは部活だし
結構地味に過ごしてたなぁ。
それでも1年生の頃は、文化祭とか体育祭とか
それなりに充実した行事を楽しんでたからよかったかも。
でも、1年生の終わりにはもう既に、目に見えない恐怖がすぐそこまで来ていて。
春休みから3ヶ月。本当ならもう2年生の新しいクラスで授業を受けていたはずなのに
訳の分からないウイルスのせいで、自宅で授業を受ける日々。
楽しみにしていた行事も軒並み中止。
2年生の秋に計画されていた、沖縄への修学旅行も最初は3月に延期。
それでもウイルスの猛威は収まらなくて
結局、3月に延びた修学旅行は完全に中止。
もう、ここまできたら何も期待できなくなった。
もちろん日本中の同世代の子達も同じ思いしてるって分かってたけど
つまんないって思ったらもうそれで終わりなんだよ。
2年生は、はっきり言うと充実なんていえなかった。
3年生。少しウイルスが落ち着いたタイミングで2年ぶりの文化祭が企画された。
なんとか開催はできたが、参加できるのは生徒のみ。
家族や地域の人も参加自由だった、あのお祭り騒ぎはまたお預け。
そこからはもう受験期で、イベントなんてそれどころじゃなかったもんな。
そしたら急に、2月に修学旅行の代わりと称して卒業旅行が計画された。
それが楽しみでしょうがなくて、進路が決まって残りの学校生活にいよいよやる気が出ないときも
卒業旅行のために頑張った。
みんなそうだった。
でも、卒業旅行を2週間後に控えたある日
中止の連絡がきた。
こういう連絡、もう何回目だろう。
経験してるはずなのに、慣れなきゃなのに。
慣れない。慣れたくない。
大人は、可哀想だとか何とかしてあげたいとか
善意でそう言ってくれてるってわかってるけど
でも、同情にしか聞こえなくて。
学生時代、青い春を充実させまくった人たちに何が分かるの?
って、思っちゃいけないのかもしれないけど
心は嘘をつけなくて。
私の高校生活はもう戻らないって
そんなの当たり前なんだけど
このモヤモヤは一生残るのかな。
いつか年をとって、同級生と思い出話をするとき
笑い話になるのかな。
これに関しては、誰かが可哀想とかなんとかしてあげたいとか思っても
どうにもならないんだよね。
振り返ってたら、ほんとに悲しくなってきたわ
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