2024/03/21(木)の日記「ドッキリ大作戦?」
今日は終業式だ。
母と別室登校の息子は、いつもと変わらず、借りてる個室に入る。
部屋にはドアの近くに応接セットのソファとテーブルがあり、そこで過ごすのが日課である。
私が持ってきたノートパソコンを開くと、息子はボランティアの先生手作りの将棋板を持ってきた。
以前までは仕事しながら相手をしても勝てたのだけど、今はもう勝てない。
あっという間に飛車と角行を取られて、為す術なく惨敗。
夏頃に一緒に始めた将棋。
ルールを覚えたばかりの頃は私に勝てなくて悔し涙を流していたのに。
強くなったなぁ。
将棋が終わると、家から持ってきた歴史の漫画を声を出して笑いながら読む。
ギャグ要素が強いので、本当に楽しそうに読む。
その次は、校長先生が買ってくれたオセロを持ってきた。
オセロは仕事しながらでもまだ私が強い。
ただ、考える時間がほとんどなくて、仕事する隙がないのが、私的残念ポイントなのだが。
短縮授業の3限が終わると、先生方が、代わる代わる部屋に出入りするようになった。
奥に通知表を保管する金庫があるらしい。
そうか、今日は終業式だから。
息子の周りは時間がゆっくりで、止まったままのような気分だけれど、世間は次へ次へとどんどん止まることなく進んでいく。
嫌がおうにも差を突きつけられる。
入学してからもう、1年が経つんだ。
息子の担任の先生も、みんなの通知表を取りにやってきた。
苦手だった担任の先生。
夏頃は、先生に話しかけられると多動になり手がつけられなくなった。
今は大丈夫そうだ。
プリントなど持ち帰るものがあるので、みんなが帰るまで残っていて欲しいと言われた。
ちらっと、大丈夫かなと、息子の様子を伺う。
夏休みの宿題を渡されて暴れだした息子を思い出す。
いやいや、もう宿題を渡されたりはしないので、大丈夫だろう。
担任の先生が部屋を出ると、息子が座っていた椅子から立ち上がった。
私は見ないふりをしてパソコンに向かいつつ、背後に意識を集中させる。
ズルズルと何かを引きずる音。
え、何、なんの音?
我慢できずに振り返ると、部屋の奥から段ボールのパトカーを引きずってきていた。
息子が入れるくらい大きな、教頭先生と一緒に作った大作だ。
おもむろに上の赤色灯部分の蓋を持ち上げ、するりと中に入り込む。
…隠れた!?
「ママ、閉めてー」
蓋は自分で閉められないらしい。
「…隠れたくなった?」
蓋を締めながら顔をのぞき込むと、いたずらっ子な顔でニッと笑い、中に小さく丸まった。
この顔は、たくらむ顔だ。
ふふん、母は理解した。
息子が何も言わなくても、分かったぞ。
これは、先生が部屋に来たら、わーって飛び出て驚かすヤツだ!
またダンボールパトカーから顔を出す。
「早く閉めてー」
「はーい」
半年前には考えられないことである。
これも、担任の先生や、他の先生方が息子に合わせた配慮をしてくれたおかげである。
…でもね。
たぶん先生が来るの、まだあと30分くらい後なんだよ。
しばらくすると、ガサゴソとパトカーの赤色灯部分を持ち上げてひょこりと顔をのぞかせた。
「まだかなぁ」
「まだまだだと思うよ」
また、もぞもぞ潜り始める。
「ママ閉めてー」
ちょっと心配になる。
「暑くないの?苦しくないの?」
「ちょっと暑いけど苦しくない」
赤色灯を閉めてあげた。
少し開いた隙間から中をのぞき込むと目が合った。
瞬間、隙間がパタッとしまった。
なんだよ、可愛いな。
そのまま数分間経過したころ、コンコンコンとドアがノックされた。
「はーい」
私が返事をすると、ガチャリとドアが開く。
担任の先生ではなく、支援級の先生が顔を覗かせた。
支援級の先生と息子はとてもいい関係ができている。
おお、違う先生だけど、ドッキリ作戦開始か!?
ちらりとパトカーを見るも、あら、出てこない。
見えなくて誰か分からないのかな。
支援級の先生は、息子がいないのであれ?という感じで話しだした。
「終業式の様子をzoomで中継しようと思ったんですけど、朝会えなくて、すみません。」
申し訳なさそうに眉を下げる先生。
わー、すみません、2限目から来たので朝はまだ部屋にいませんでした…。
慌てて謝ると、背後で、ミシッガサッと音がした。
後ろを振り返ると、パトカーの赤色灯がゆっくりと持ち上がっていた。
カパッ。
頭をのそーっと出す息子。
満面の笑み。
「……!!!」
「……!?!?」
先生を恐る恐る見ると、固まっている。
地味…!!!
地味すぎるよドッキリの登場が!!!
案の定先生、戸惑っちゃってる!!!
「…わ、
息子くんいたの!?
やーだー!いないのかと思っちゃったよー!」
先生、状況を把握してくれた!
スイッチの入った音がしたんじゃないかくらいに切り替えがすごい。
笑顔で息子に話しかける。
「すごいね、前作ったパトカー!
ちゃんと入れるんだね!
ちょっとやり直すから、もう1回入ってくれる?
もう1回ドア開けるから!」
先生、リアクションをミスったと思ったのか、ドアを開けるところからやり直すと。
え、プロすごいね。
また赤色灯の扉を閉めてあげる。
「コンコンコーン。
あれ、息子くーん?
いないのー?」
支援級の先生がやり直しで息子を探してくれる。
息子、また、満面の笑みでゆっくりと顔を出す。
「ぎゃー!!びっくりしたー!!!
息子くんそんなとこに!!!
パトカー凄いじゃなーい!!!」
先生、マジですごいです。
プロとはこういうことか。
息子は声を出して笑いだし、大満足である。
私もTake2を動画に納めさせてもらってホクホクである。
その後、息子は担任の先生にも静かなドッキリを敢行した。
担任の先生は、静かに驚いてくれた。
でもパトカーの中のハンドルや細部を褒めてくれる。
それぞれ、先生方の対応、みんな素敵だった。
ありがとうございます。
よく考えれば、うちの自閉っ子にドッキリみたいな激しいパフォーマンスは、よっぽど親しくなければ無理である。
そんな彼は、2人の先生にドッキリ成功したので、なんとも満足気だ。
校長先生が帰り際に声をかけてくれた。
「今日はなんだか楽しそうだねー」
息子はニコニコするばかり。
明日から春休み。
お休みが終われば2年生。
先生方がみんな変わらないといいなと思いつつ。
変化もあるはず。
4月は変化が苦手な息子には試練の時だ。
でも今年は、私も周りも、サポート体制万全。
また一緒に学校に通おうね。
ママ、来なくていいよって言われるまで、一緒にいるね。
急なお休みもドンとこい!
一度、将棋の真剣勝負をいどもうかな。
今日も良い一日だった。
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