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それぞれのミッション

企業情報や求人サイトにある「われわれのミッションは…」とか「あなたのミッションは…」と書かれてる文面が苦手である。とくにIT企業にありがちな言い回しだ。ちなみに、我が社の採用情報にもばっちり書いてある。IT企業で働いてるくせに、使い慣れない横文字はムズムズする。かっこつけんなよ、となぜか斜に構えたりもする。ある程度生活に浸透してる言葉ならよいと思うけど、普段使わない言葉を盛り込まれると、とても不自然に感じるのだ。それどころか、抵抗感さえ湧いてくる。

コロナ禍においての小池都知事の言葉の選び方、発し方がまさにそれであった。クラスター、オーバーシュート、ロックダウン、東京アラート、ウィズコロナ、アフターコロナ、などなど、ほかにもあったと思う。実際の会見では丁寧に説明してるのかもしれないが、ニュースを見るたびに唐突感が否めず「何だかなあ」と思った。当初は、周囲で分かりにくいといった声もよく聞いた。浸透させるのにキャッチコピーのような一定のインパクトは必要と感じるけれど、時間を経て振り返ると本当に必要だったのか?と思う。とくに東京アラートは中身がなくて、独り歩きした名称の虚しさだけが残った。

とくに小池都知事が好きとか嫌いではない。今回に関して各知事のみなさんは大変な思いをされてるだろうし、だれも予想できないことだった。それに関して正解も不正解もないと思っている。

二年前に転職したとき、わたしの世界はひっくり返った。主に、言葉が分からずひっくり返った。コミット、セグメント、フェーズ、マージ、フィックス…  比較的簡単な言語も理解できず(ただでさえ仕事内容も分からないのに)慣れない環境にひたすら混乱してした。その場では分かった振りをしてあとでググる、といういい加減なこともしていた。新たに入ってきた新人さんもたぶん、同じようなことで苦戦していると思う。今の環境はなんとなくその時に似ているな、と感じた。

今は慣れてしまったこともあり、分からないことは「分からないので教えてください」と伝えるようにしている。それで大抵のスタッフ・上司が詳しく教えてくれるが、聞くこと自体ができない会社だと、とても辛いだろなと思う。新しく入ったスタッフは聞いていいのか悪いのかも分からないので、最初は手探りで進んでいかなくちゃいけない。これを聞いたら恥ずかしいかもしれない、それくらい自分で調べろといわれるかもしれない。様々な心理が働くから、大変だろうと思う。

分からないことを分からないと言えないひとは、結構多い。そして分からないまま放置してしまうひとも、結構多い。そういうものだと思う。わたしは東京都民ではないが、今回の都知事選に限らず、「分かりやすく」伝えてくれるひとが代表として選ばれてほしいなと思う。日本の行政は、とにかくこまごまとしてややこしい。理解してないことが恥と感じる国民に「分かってる前提」で伝えるのではなく、まずは分かりやすく伝えることを意識してほしいと思う。私たちは皆ばらばらで、一度でするりとたくさん飲み込めるひともいるし、何度も噛み砕いて少しづつ食べるひともいる。国民のひとりひとりに向き合うというのは、まずそういうところからじゃないだろうか。

怒涛の上半期がおわり、7月に入って何人か新しいスタッフが入社した。一定期間の研修のみで、他スタッフの顔もろくに分からず在宅勤務しなければならない社員の不安は、だれにも図りしれない。会社に入ったころ、パニックだった自分を思い出して、なるべく説明を交えて分かりやすい言葉で伝えるようにしたい、と考えている。それがまあ、いうなれば、今わたし個人が成し遂げたいと思うミッションだ。

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