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書くことは話すこと〜地球の裏側に届くまで


「休み時間に小学校に着くと珠緒が遊んでいる声が聞こえる」
PTAの用事などで学校に来た時に母によく言われました。
「タマちゃんが参加すると誕生会が華やかになる」
親友のお父さんにそう言われたこともあります。自然のままに放っておけば私はとにかくおしゃべりです。頭の中で考えたことがすぐ口に出るタイプです。頭の回転と舌が連動しているような感じと言ったらわかりやすいでしょうか。「口は災いのもと」という言葉を実感したのは大学生になってからで、それまでの私は早口でよく喋るのは自分の長所だと信じて疑ったことがありませんでした。「明るく元気! 面白い! お茶目!」それらは全部褒め言葉だと思っていました。事実子供の頃はそれでもよかったんだろうと思います。


もちろん私だって人を傷つけることを言ってはいけない、くらいの常識はありました。でも人を傷つけるつもりでなくても、頭に浮かんだことをどんどん話す癖というのは思わぬところで人を傷つけたりするらしい。「口が災いになる」って気づいたのは大学に入って間もない頃です。当時の私のいた学科は1学年8名しか女の子がいなかったのに、そのうちの6名から総スカンを食らってしまったのです。落ち着いて考えると入学して間もない時に私がかなり独壇場で喋ってしまったのがいけなかったんだと思います。


でも生まれつきの「おしゃべり」ってなかなか直せるものではないんですね。さすがに仕事の契約や守秘義務に関することなどは話しませんし、そういうところは口が固い方ですが、特に私が好きな「おしゃべり」はもっと感覚的なこと。「空が青い」とか「今日の風は優しい」とか。昨日読んだ本のこととか。雲の形とか。目に付いた素敵はなんでも隣の人に話したくなります。歩いていれば目には素敵がどんどん飛び込んできますから、そりゃ、近くにいる人はうるさいことでしょう。でもね、おしゃべりな人にとってはそれを抑えることって結構ストレスなんですよ。「お口チャック」なる新商品が出れば買いたいくらいです。


でも今からもう20年以上前のことですが、あることがきっかけになって「話すこと」は「かくこと」に置き換えられるじゃん! って気づいたんです。そう! それはメールでした。
メールなら相手の時間や都合はあまり考えないで、好きな時に好きなことが書けます。それに、思いついたことを一旦整理してから書くので内容もまとまりがあるものになります。そして何よりちょっと照れくさいようなこともメールなら割とスラスラっと書けます。
親しい友人とまるで文通のようにメール交換をするようになりました。
パーティなどで知り合ったちょっときになる男性ともメールで後から連絡を取り合うとそれまで一回きりだった関係が次につながりデートするようなことも増えてきました。
不思議なもので自分はおしゃべりが得意だと思っていたけれど、自分のペースで考えをまとめて自分のペースでかけるのでメールだともっと心が伝わりやすいことに気づきました。
私は一人で喋っていただけで、相手との間の取り方って実は苦手だったのです。でもメールだとちゃんとペースが作れるので、自分の感性を上手に伝えられることに気づきました。
「メール美人」なんてニックネームが付いたこともあります。
そう、私にとって「書くこと」は「上手に話すこと」だったのです。
メールが一般的になり、ブログやSNSをやるようになって、どんどん書くことが増えてきました。ブログやSNSを書けばそれなりに反応もあり、私は「おしゃべりな人は書くのもうまい。だから私は書くのがうまい」ってちょっと自信家になりかけていました。
でも、そんな自信の鼻が簡単に折れるような出来事がある日起こりました。それは去年の夏のことです。実は、私は自分の仕事のことで考えている「ある考え」を多くの人に知ってほしくて、「読まれる文」を書けるようになりたいと、天狼院書店のライティングゼミを受講したのす。
毎週課題の講評があるのですが、それはそれは酷いもんでした。
「書くのは得意」って思っていたのですから、正直かなり落ち込みました。メール美人って言われたのはなんだったの! そんな気持ちでした。せっかくゼミに参加しているので、言われることをできるだけ素直に受け止めて、とにかく毎日のように書き、課題の提出だけはしていました。だんだん評価が良くなることも出てきて、4ヶ月のゼミが終わる頃にはある程度コツがつかめた感じになりました。それから3ヶ月次のステップのゼミも受けてみて、ようやく分かってきたこと。昔の私は「うまく書く」ことを気にしすぎていたのです。「わかりやすく書く」それが一番多くの人に読んでもらえることにつながる、少しでも長く読んでもらえる。たとえ無料とはいえ、私の「考え」を多くの人に読んでもらうためには「わかりやすさ」を徹底することが一番大事だったのです。それから熱量を込めること。

学校中に響いていた小学生時代の熱量で、小学生にもわかる言葉でこれからも毎日、ブログを書いていきます。私にとって書くことは「わかりやすく話す」ことだから。
今年になって毎日ある程度長文のブログを更新し続けてみて分かったことは2つ。
1)書けば書くほど「書く題材」は湧き出てくる。
2)毎日書いていると「伝わるように話すこと」もうまくなる

だから私は今日も、明日も明後日も、インフルエンザでも、中耳炎でも、便秘でも花粉症でも……書き続けます。地球の裏側に届くまで。

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