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パフェを、食べに行きませんか?

と、誘われたことがある。

今の県に引っ越してきて、仕事を始めて3ヶ月ほど経過したときに、新人さんが来た。自分も新人だけど。
先輩から「●●係に新人さんが来るんだって。ご主人の転勤で引っ越してきた方らしいから、お話してみたら」といって、皆で一緒にランチする機会を作ってくれた。
新人の方は、とても笑顔が可愛らしくて、20ほど年下の私にも丁寧に接してくれる方だった。初めて職場の人達とランチに行ったときは、何を話していいのかなぁ、と思っているうちに終わってしまい、あまり話せなかった。
私は部署にいまいち馴染めていない感があって、昼休みは大抵自分の机でささっと弁当を食べて、職場の近所を散歩することが日課だったのだが、ある日、その方も食後同じコースを散歩していることに気が付いた。散歩しながら、午後の仕事が始まるまでの、15分程度話す日が続いた。


お互いに初めて地元を離れて、初めて配偶者の転勤で引っ越してきたことも、その方の穏やかな雰囲気のおかげもあって、話しやすかった。
自分より年上なのに、「こうしたほうがいい」とか人生の先輩としてのアドバイスを全然せず、丁寧に接してくださったことが印象的だった。
反対に自分は、年上の方に対して失礼で生意気な態度だったと思うのに、そんな素振りは見せず、親切にしていただいた。
家の話、趣味の話、好きなものの話、とか久しぶりに夫以外の人へ話すことができた。
ここの前の職場は、つい気が緩んでプライベートのことを話すと、一瞬で拡散されるので、余計なことは職場の人に話さないように気をつけていただけに、今職場の人と色々話せていることが不思議だった。仕事はお金を得る手段でしかない、と思っていたけど、家の外とつながる手段にもなるのか、なんてかっこいいことも思ったりした。

自分の雇用期間が先に終わることになった数日前、誘っていただいたのがタイトルにした言葉である。

パフェを、食べに行きませんか?

何ですか、その素敵なお誘いは。
人生でそんなお誘い、初めてされた。
飲みに行こう、でも、お茶しに行こう、でもなくて、パフェ…!
お互いに夕飯作りがあることや、お酒が飲めないことへのお気遣いもあったと思うんだけど、何て心ときめく響きなのか。
誘っていただいてからの数日間、「▲日は●●さんとパフェを食べに行く日」とわくわくしてしまった。
デパート内のカフェで、フルーツがたくさんのパフェを食べて、いつものお昼休みよりも長めに話して、連絡先とプレゼントの交換をした。
遅くまで飲んだり何軒もはしごしなくても、とてもわくわくした時間だった。

自分は退職して、その方は引っ越してしまったのだけど、わくわくする言葉と時間をくださったことにとても感謝しています。
20年後、何かわくわくする言葉をさらっと言える大人になってみたいな、難しそうだな。

(追記)この記事の見出し画像に、みんなのフォトギャラリーより素敵な写真をお借りしました。自分が拝借するのは何だか恐れ多い気がしますが、ありがとうございます。

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