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社会人歴19年、「エンタープライズセールスができるようになった」2年間の物語

はじめに

ナレッジワークの吉村です。(社内ではHulkとよばれています。)
ナレッジワークはセールスイネーブルメントツール「ナレッジワーク」の開発・提供をやっているスタートアップです。

このnoteはナレッジワーク入社以降の2年間を振り返り、エンタープライズセールスとして非常に苦しんだ1年目、上手く行きだし結果的には前年比5倍の売上を残すことができた2年目を振り返りたいと思います。

本当にしんどかった時代を支えたもらった社内のメンバー、特にナレッジワークの麃公将軍(※漫画「キングダム」の秦の将軍)ことキリさん(Xアカウント→@lewk1126)には心から感謝をお伝えしたいです。


以下のような方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。

  • これからエンタープライズセールスにチャレンジする方

  • ご自身はエンタープライズセールスで成果を上げているけど、メンバーをどう育てていいかわからない方

  • 現在大手企業に在籍しており、大手企業を対象に営業してそれなりに成果をあげているけど、スタートアップのエンタープライズセールスって何やっているんだろうという方

ちなみに吉村はこの3つ目のパターンで「まあそれなりにできるだろう」と思っていたら非常に苦労しました。

1.吉村って誰?

小学校時代から初めたアメフトで大学日本一になることを目指し、京大アメフト部に入部。プレイヤーとしてALL JAPANや関西ベスト11に2度選出されるも、チームとしては日本一になれず。そこでチームとして勝つことの難しさ、尊さを学びました。

大学3年生のオールスターゲームより。上列左から2番目が吉村。


1社目は新卒で入社した大手損害保険会社で、大手法人向け営業を9年間、人事で全社の人材開発や組織開発に4年間従事。
2社目は当時約50人のスタートアップに転職し大手法人向け営業に4年間従事。
3社目となるナレッジワークでは2022年4月に入社し、2年間フィールドセールスとセールスイネーブルメント担当に従事していました。

大手法人向け営業と人事のバックグラウンドがある人間と思ってください。「人と組織の可能性をテクノロジーで最大化したい」そう思ってキャリアを歩んでいます。

詳細は以下リンク先をご覧ください。
(プライベートでは筋トレや現代アートが好きです。過去のベンチプレスのMAXは175キロです。)


2.何がしんどかったのか?

フィールドセールスとしてそれなりに受注はするものの、「レベルの高い人に囲まれて自分が一番組織に貢献できていない」「でもどうしたら成果をあげられるのかわからない」と思いながら過ごす日々が続きました。

社会人になって19年目になりますが、ここまで自己効力感が低い期間を過ごしたのは初めての経験で本当に苦しかったです。

3.何故しんどかったのか?

振り返ってみると同じ営業でも以下の通り「ゲームのルール」は環境によって大きく異なります。

その違いを理解せず、「あれ、こんなはずじゃなかったのに」「なんで上手くいかないんだろう」と悪循環に陥っていました。

(1)過去の営業環境とナレッジワークの営業環境の共通点

  • 大手企業対象

(2)過去の営業環境とナレッジワークの営業環境の相違点

  • ①既存顧客中心 vs 新規顧客中心

  • ②予め予算がある領域 vs 予め予算がない領域

1社目では顧客の人事部門や総務部門に損害保険を、2社目では主に顧客の人事の採用部門に人の創造力を可視化するツールを商材とした営業をやっていました。

1社目は「既存中心」+「予め予算がある領域」、2社目は「新規中心」+「予め予算がある領域」の営業でした。
それぞれもう少し詳しく見ていきます。

①既存顧客中心 vs 新規顧客中心

既存の場合は「顧客の地図」がありますが(=どこに誰がいて、誰がキーパーソンなのかが一定程度わかっている)、新規の場合は自ら足を動かして「顧客の地図」をつくるところから始まります。
最初はこの感覚があまりわかっておらず、受動的に会えた方と商談をしており、能動的に会うべき方に会いにいけていませんでした。

②予め予算がある領域 vs 予め予算がない領域

例えば大手企業の人事の採用部門の場合、毎年新卒採用を行っており、「いつまでにこれくらいの人数を採用しないといけない」「予算はこれくらいで毎年申請している」と締切と予算が決まっていることが多いと思います。

一方でナレッジワークの場合、特に締切や予算が決まっているわけではないので、こちらがプロジェクトマネジメントして日付を切って進める必要がある、という認識を十分にもてていませんでした。

4.変わったきっかけは?

2023年2月、自分の商談動画を見てもらったフィールドセールスの同僚からの一言、「Hulkさん、商談中全然楽しそうじゃないですね」
(しんさん、有難うございます!!!)

今でもその時にハッとしたことを覚えています。「確かに顧客に価値提供することより、自分がやらないといけないことをこなすことばかりになっていたな。」と。

改めて自分で商談動画を見直しても、決められたことを順番になぞるばかりで、顧客に向き合っていない営業がそこにいました。

5.具体的に何を変えたの?

(1)スタンス
当然ながら行動が変わらないと意味がないと思っています。ただ、「何を軸に行動を変化させるのか」という観点で以下スタンスを重視しました。

①「営業は顧客のパートナーである」

 ナレッジワークの営業ハンドブックより

ナレッジワークでは営業の役割を「営業は顧客のパートナーである」と定義しています。

「顧客のパートナーって何だろう?」これを考え続けた結果、「顧客の課題解決のパートナーになることが大事」という結論にいたりました。
この時までは「顧客の(ナレッジワーク)購買のパートナーになることが大事」と誤解していた気がします。

上でも下でもなく、テーブルの同じ側の横に座り、一緒に課題解決をするパートナーになる。そう決めたら後はシンプルでした。

貴重な時間を自分のために使ってくれた顧客に、価値のある時間を過ごしてもらいたい。そう思い、他社事例(自社サービスの事例ではなく、営業施策の取り組み事例など)やトレンド情報などを学び、顧客に伝えていきました。

商談の結果、他社サービスがいいと思った場合は他社をお繋ぎしたこともあります。不思議なもので、そういうスタンスで商談に臨むとどんどん商談が楽しくなってきました。

孔子「論語」より

自社商材を売ることがゴールだと、どうしても無理に自社の話に引きずり込んでしまいがち。しかし、顧客の課題解決をゴールにすると、たとえ自社商材が最適でない課題であっても、顧客への貢献はできます。

今までは「自社商材で解決できない課題をお持ちだったら嫌だな」と思って商談に臨んでいましたが、「自分はセールスイネーブルメント分野においては、(少なくとも)顧客よりプロである。」「であれば貢献できることは何かあるはず。」と思って商談に臨むことができるようになりました。
(もちろん、プロであるために日々勉強し続けていることが前提です)

「パートナーってどういうこと?」と思われた方はキリさんのこちらの記事が参考になると思います。

②「エンタープライズセールスはプロジェクトマネージャーである」

キリさんから入社のday1から「プロジェクトマネジメントに関する本を読め」とずっと言われていましたが、正直よくわかりませんでした。でも、今は明確に「エンタープライズセールスはプロジェクトマネージャーである」と言えます。

プロジェクトマネジメント協会が制定しているPMBOKを参照すると、プロジェクトが以下の通り定義されています。

プロジェクトとは、独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施する有期性のある業務

プロジェクトマネジメント協会が制定しているPMBOKより

我々はセールスイネーブルメントのプロであり、ナレッジワーク導入プロジェクトのプロです。であれば、検討を進めたいという顧客を導くのは営業の役割、強くそう思います。

③「使えるものは全て使えばいい」

「自分でなんとかしなくては」1年目はそう思っていました。しかし2023年2月、代表の麻野から「営業は個人戦ではなく組織戦。もっとみんな巻き込めばいいのでは?」というアドバイスをもらいました。

代表・麻野からの当時のSlack(抜粋)

そのアドバイスをきっかけに、自分だけでやろうとして、結果として顧客に価値を提供できなければ、それが一番不誠実だと思い至りました。

(2)行動

①顧客の主体性を引き出す

こちらが無理やり検討プロジェクトを引っ張るのではなく、顧客が自分の意思で検討を前に進めている状態をつくることにかなり気を使いました。
吉村は顧客の主体性は以下の数式で表現できると思っています。

顧客の主体性

つい期待の総量を増やすことばかり目がいきがちですが、意識して不安の総量を減らすことを配慮するようにしました。

まだまだ上手くできませんが、ポイントは先回りです。顧客が不安に思っていることを口に出されて、そこに対して説明して疑問解消しても顧客の潜在意識の中には「自分は◯◯に不安を感じた」という事実が残ります。

学術的な裏付けがある話ではないのですが、潜在的な不安が顕在化すると不安の総量が蓄積していく一方で、不安が顕在化する前に先回りして解消すると、そもそも顧客が「自分は◯◯に不安を感じた」という事実が残らず、「不安の総量」の上昇を抑えることができる感覚があります。

また、ストレートに「検討を進めたいと思いますか?」と聞くことを通じ、顧客自身にも都度自問頂くようにしていました。

当時の自分は顧客担当者に提案して「いいですね」となっても、その後、顧客担当者が顧客内で周囲を巻き込んでいくフェーズで商談が止まることがかなり多かったです。

複雑性が高いエンタープライズセールスにおいて、顧客の主体性がない状態で顧客内の関係者と合意しきることは不可能に近いです。また顧客自身も「なんとなく気になっているけど、自分が本当に解決したい課題が何かがわからない」という状態も多いと考えています。そういった観点からも、良質な問いを通じて顧客の主体性を引きだすことは重要だと感じています。

主体性については、まさに麃公将軍の「火を絶やすでないぞォ」を地でいくキリさんのこちらのポストが参考になります。

②「誰が」「いつまでに」「何をするか」を明確化し、顧客と合意する

プロジェクトマネージャーにとって重要なことはプロジェクトを前に進めること。前に進めるには「誰が」「いつまでに」「何をするか」を明確化し、双方で合意することが必要です。

商談において10分以上は時間を使い、商談時間内にネクストアクションを決めきりました。
Tipsですが、WEB会議では何かしらのドキュメントツール(メモ帳でも可)を画面共有しながら、対面ではホワイトボードを使いながらネクストアクションを合意することがおすすめです。

より一緒に進める「プロジェクト感」が出ますし、次回商談時に顧客から「すみません、忙しくて着手できていなくて・・・」が圧倒的に減ります。

③社内で案件相談をする

これは非常に大きかったです。
相関図を作成し、シナリオをつくってキリさんと頻度高く案件相談をしました。

相関図の例

最初は正直いろんなツッコミを受けるのがめんどくさいなと思っていました。ただ、「案件相談の目的は、自分が何がわかっていないのかをわかること」「複雑性の高いエンタープライズセールスではリスク要因を洗い出し対処することが重要だが、1人ではリスクに気付けない」と聞いてから、積極的に案件相談をするようになりました。

ちなみにナレッジワークでは相関図を作成する際、Goodpatch様のStrapというオンラインホワイトボードツールを使っていますが、激しくおすすめします!


④使える人は全て使う

弊社のキリさんは麃公将軍のように混沌とした盤面になると無類の強さを発揮します。案件がスタックしそうになった時、自分の力量だと盤面をひっくり返せそうにない時、自分が苦手なタイプの顧客にあたった時など、思い返せばいろんなところに出てきてもらいました。

また、受注後の導入や運用につき先方の不安を解消するために、カスタマーサクセスの責任者の高嶋にもかなり協力してもらいました。

「社内のリソースは全て自分が使える手札として使う」。この考え方があると自分1人で超えられない壁も超えられるのでおすすめです。

こちらにキリさんがいつも言っている話がまとまっているのでご参考まで。

「営業担当者である自分が社内のリソースを使うのは申し訳ない」。もしかしたらそう思う方もいるかもしれませんが、あなたが売っているプロダクトをつくっているメンバー、あなたが日々その会社で過ごすことができているインフラを整えてくれているコーポレート部門のメンバー、あなたにパスを出してくれたインサイドセールスのメンバーの顔を思い出してください。

「顧客と商談して価値提供できる機会」をつくっている方のおかげで、あなたは今そこに立つことができています。そう考えると「本当に申し訳ないことは何か」が見えてくるのではないでしょうか。

6.成果はどうなったの?

従業員数3,000名以上の大手企業を中心に受注ARRが前年比で5倍に、新規受注社数が前年比で2.5倍になりました。

また、並行して既存顧客の契約更新率も100%でした。
(これはカスタマーサクセスのメンバーの努力によるところが本当に大きいです。手前味噌で恐縮ですが、年齢問わず非常に優秀なメンバーが多く、いつも刺激をもらっています)

2023年の成果

新規受注社数が増えたただけではなく、大幅アップセルや一度失注した案件が数カ月後に戻ってきて受注するということも増えてきました。
(ターゲット社数が限られるエンタープライズセールスにおいて「失注」という概念はないと思っていますが、この話をすると長くなるので便宜上「失注」という表現を使います。)

何よりも商談が楽しくなったことが一番大きい変化です。

7.大事なこと

「正しく努力すること」が重要だと思います。
エンタープライズセールスになれる簡単な方法が存在すればいいのですが、残念ながらそんな方法はありません。そもそもエンタープライズセールスはそんなに簡単なものではありません。(吉村も今でも出来ないことばかりです)

「エンタープライズセールスは難しいもの」そう腹括りした上で、地道に課題を乗り越えることしかできないと思っています。

ただ、「方向性がない中でひたすら数をこなす」ことと、「方向性をもって数を経験する」ことは大きく異なります。
吉村の場合は5.記載のことを意識しながら多くの商談を経験する中、周囲の支援のおかげで少しずつ成長することができました。

変な言い方ですが「正しく努力できていない」(正しく努力できていれば、向き合う課題に変化が生じるはず)と思われる方は「何が真に解くべき問いなのか」を考えてみてもいいかもしれません。

この2年間でよく思い出した大学アメフト部時代の恩師の言葉をご紹介します。

恩師の言葉

ナレッジワークのミッションは「できる喜びが巡る日々を届ける」です。正しく努力すればできるようになる、そんな世界を実現したいと思っています。

おわりに

自分は社会人生活19年でこの2年間が社会人になってから一番成長しました。
「早く行きたければ1人で行け。遠くまで行きたければみんなで行け。」という言葉があります。吉村は「みんなで早く・遠くまで行きたい」。そしてナレッジワークのメンバーを見れば行けるのではないか、そう思っています。

なお、セールスとしてトップの成果を残せたことでお役御免となり、2024年4月から専任のセールスイネーブルメント担当を担うことなりました。

吉村の役割が変わりました

正しく努力すればできるようになる、そんな世界をつくりたいと思っています。そのためにも吉村は日本で有数のイネーブラーになり、このセールスチームが日本で一番かっこいい営業集団になり、このチームで勝ちたい。

イネーブルメントの面白さ、尊さは「正しく努力すればできるようになる」ことだと自らの経験から強く実感しています。

難しいのは「正しく努力する」ことですが、誰か1人でも壁を突破できる人間がいれば、その要因を抽出し言語化・構造化し、展開・実行することでみんなで前に進むことができます。

社内の方針発表資料より

幸いなことに社内には麃公将軍ことキリさん始めとして、様々な経験や強みを持ったメンバーが多くいます。

また、既存顧客の皆様も「日本の営業を一緒に良くしていきたい」そう熱く思っている方ばかりです。

既存顧客の皆様

こんな最高な環境、こんなチャレンジングなタイミングでその場にいれる機会はなかなかないと思います。当社がイネーブルメントの最高のモデルケースになり、ミッションである「できる喜びが巡る日々を届ける」事ができる環境をつくりたい、そう強く思っています。

エンタープライズセールスにチャレンジしたい方、イネーブルメントを体現するプロダクトづくりに関わりたいPMMやPdMの方、エンジニアの方も全方位にわたって採用を強化しています。
「みんなで早く・遠くまで行きたい」と思ったら、是非お気軽にご連絡ください!


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