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徒然草 男の子と本

自宅の本棚に隙間ができて、斜めに傾いている。近所の男の子に、本を貸すようになったからだ。

会社を平日休みもらっている間、春から近所の男子大学生と飲みにいった。パーマにしたんだ、と言って頭をくしゃくしゃしながら話す男の子。ふわふわしていてとても柔らかそうで、手が思わず伸びてしまいそうになる。

レモンサワーを飲みながら、好きな本はなに?と聞かれたので、山崎ナオコーラさんの「指先からソーダ」をカバンから出して手渡した。ボロボロだね、ありがとう、と言われて少し恥ずかしい。
普段は何を読むの?と聞くと、「日本国のほにゃらら…」とハードカバーをカバンから出してきて、正直全く興味がわかず、へえすごいねー、しか言葉が出てこなかった。もう一冊あるよ、と出したのは川上未映子さんの本だったので、この子の振り幅に感心した。勧めた山崎ナオコーラさんでも、彼にとってはどこまでも正解だったようだ。

数日後、本も返したいから会いましょう、と言われ、返してもらった。渡される時に、これが好きだった、といいながら目次をめくり「目のボキャブラリー」と「硬くて透明な飴 〜受賞の言葉〜」と書かれたタイトルを伝えてくれた。どちらもわたしがとっても好きなエッセイで胸がクッと熱くなった。嬉しくなったし、彼とは気が合いそうだな、と思った。

「目のボキャブラリー」は、”カーキ色のズボン”をその人の母は”オリーブ色のズボン”と捉え、”赤色のピアス”をその人の彼氏は”桃色のピアス”と捉える、という、一つの視点で幾分にも感じ方がある、目のボキャブラリーのお話。「硬くて透明な飴 〜受賞の言葉〜」は、『人のセックスで笑うな』で受賞した際の言葉だ。ここが好きだ。

(中略)言語表現として面白いもの、ギリギリのもの、甘くて硬いものを書きたい。(中略)みなさんが誉めて「甘い」「硬い」「で、結局何が言いたいの?」と思ってくれたら嬉しい。(山崎ナオコーラ「指先からソーダ」)

どちらも定義しない自由が描かれていて、私は心地がいい。彼も心地いいと思ったのであれば、それはやはり気が合いそうだ。

また本を貸して欲しいと言われたので、同じ著者の「美しい距離」を貸した。
あ、と言ってもう2冊、ビジネス本を貸した。(「日本国のほにゃらら」に負けないように)って。…クソだせえなあ、私。

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