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#38代わりの誰か/運命の恋

主人は私の友達が住んでいる町でお店を経営していた。友達とも知り合いだった。
その時は挨拶をした程度だったが日本に帰ってから私の友達を通じて連絡先を交換した。好きになったわけでは無かったけれど、何となく焦っていたから…。今までの人生で彼、もしくはその代わりになる人がずっと居た。だから誰かと別れても寂しくなかった。優しくしてくれる誰かがいたから。
けれど、人生で初めて周りに誰も居ない事に気づいた。自分でその人達の存在を消してきたのもあるけれど…。だから、30歳を過ぎて誰も相手がいない現状を早く脱したかった。

私は一人暮らしをしてしばらくはよく部屋で泣いていた。たまたま松田君と別れる前に連絡が来た元カレの田村さんと時々会ってはいたけれど、やっぱりこの人は違うと思ったし、私から何度も別れたくせにずっと心の中から離れないアナタにメールを送ってしまったりした。アナタの携帯に登録されていた私の番号とメールアドレスは私が消去したけれど、私の携帯に登録されていたアナタの番号を消せずにいた私はズルい人間だ。

そして優しいアナタと時々電話をしていた。アナタはそこで、1年前一人であてもなく横浜に来た事を私に告げた。私の住んでいる町を見てみたくなったから。もしかしたら会えるかもしれないと思ったから、と。
何で?まずそう思った。私と付き合っていた時は一度も私に会いに来てくれた事など無かったのに、どうして私と別れた後で来たりするの?タイミングが違うよ…。アナタと私は本当にすれ違いなんだと実感した。

主人とはもちろん会うことは出来ない。けれど、メールやテレビ電話でほぼ毎日連絡を取っていた。
2ヶ月後には私に会いに日本に来てくれる事も決まった。けれど正直私の気持ちは自分でもよく分からなかった。
アナタの事はまだ好きだけれど、何度も付き合い、別れ、好きだけでは上手くいかない事がある事を思い知っている。だから、私は主人の事を好きになろうとした。なぜならこのまま順調にいけば、私は主人のいるオーストラリアにいずれ行く事になるだろう。就きたくて就いた仕事なので誇りを持って働いてはいるが、東京で満員電車に乗り会社に行く毎日には疲れていた。だから、海外で暮らしたいと思っていたのだ。主人と居ればその夢が叶うことになる。

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