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#43結婚/運命の恋

四十九日が過ぎ、私はオーストラリアに戻った。家族の事が心配では無いと言えば嘘になるが、ここに居ても私の居場所は無い。父にも早く一人で生活する習慣を身につけてもらわねばならないし。

オーストラリアに戻った私をみんな暖かく迎えてくれた。特に既にお母さんを無くしている友人には優しく接してもらい有り難かった。
主人のお店の手伝いをしたり、スポーツを楽しんだり、お菓子を作ってみたり、私のオーストラリア生活1年目は楽しく過ぎていった。

しかし、私の誕生日にも、クリスマスにも、バレンタインデーにも主人からは何も言われない。二人の将来の事を話した事もない。私はだんだんそんな主人に苛立ちを感じていた。何故なら私は結婚がしたくてここに来たから。家族、友達、仕事、そして何よりも私が大好きだった"アナタ"からのプロポーズを選ばずにここに来たのだ。

母の一周忌に合わせて、二人で一時帰国をする事を決めていた。なので、その数カ月前に私からそれとなく聞いてみた。しかしプロポーズはされない。ならば強硬手段に出るしかない。私は主人に、結婚式を挙げたい場所はもう決まっていると伝えた。実際、主人に出会う前から、私は恋愛の神様がいるという都内の神社によくお参りに行っていた。友達と一緒の時もあったが、一人で行く事も多かった。そして度々見かける白無垢を着た花嫁さんに憧れをもち、自分もここで結婚式を挙げたいと思うようになったのだ。
そしてその神社の名前を告げた時、主人が、地元の友達がそこで働いているかもしれないと言い出したのだ。何という偶然。そして、そんな偶然が後押しし、私達は一時帰国のタイミングで結婚する事になった。

成田空港に降り立った瞬間、湿気が私にまとわりつき、日本に帰ってきたんだと実感した。

式までに時間が無い私達は、式場に出向き打ち合わせ、婚約&結婚指輪の購入等々忙しく過ごした。
そして、6月の一週目に母の一周忌を無事に済ませ、その一週間後に式を挙げた。週末はかなり前から予約で埋まっているし、そもそも海外生活の長い主人は日本にあまり友人がいないという事もあり、親族のみの小さな式にし、他の花嫁さんがいない平日にこじんまりと結婚式を挙げた。

遂に私は結婚した。32歳の梅雨の出来事だった。

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