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#40 新天地へ/運命の恋

予定としては、仕事の忙しい年始が終わったら、退職して、オーストラリアに行く事にした。
そして、最後に両親と過ごす意味も込めて、年末にはマンションの部屋を出て実家に戻る事に決めた。

職場に退職の旨を伝えたり、安いチケットを探したり、会える時に会いたい人に会ってお別れをしたり、やる事はギリギリまで沢山ある。

そんな日常の中、ある日アナタと電話をした。そして、オーストラリアに行く事、おそらく結婚するだろう事も伝えた。アナタは主人がどんな人なのかを私に尋ね、私の固い意志も確認した。
しかし数日後、またアナタと電話をすると、アナタはオーストラリアになんか行くな、大阪に来い、一緒にゼクシィを買って見ようと私に言ったのだ。混乱する私の頭。ずっとずっと待っていたアナタの言葉…。けれど、もう遅いよ。決めちゃったよ。チケットも取って、退職する日も決まったんだよ。
全部全部手遅れなんだよ…。私とアナタはずっとすれ違いなんだよ。もっと早く言ってくれてたら…。きっとこれは神様が私達はやっぱり一緒には居られないと言っているんだろうな、と私は思った。そして、私は悩んだ挙げ句、オーストラリア行きを止めなかった。

3月のある日、私は一人で主人の待つオーストラリアに旅立った。不安や心配より希望や期待が上回った。
久しぶりのオーストラリア。空気が澄んでいる。空が高くて青い。今日からここに住むんだ。新しい生活にワクワクした。
しばらくは主人が友達と一緒に住んでいる家に私も住まわせてもらうことになった。そして到着の2日後、昼間リビングに居ると同じ家に住んでいる20代の男の子が現れた。そして彼は私に『君の家族は大丈夫?』と聞いてきた。私は彼の英語は理解したものの、意味がイマイチ分からず、うん!とだけその場では答えた。しかし、その数時間後その言葉の本当の意味を知った。主人が仕事から帰ってくるなり、日本で大きい地震があったって。お母さん達に連絡した方が良い。と言ってきたのだ。そう、その日は3月11日。東日本大震災が起こったのだ。まさか、そんな大変な事が起こったなんて信じられず、けれど主人と一緒に部屋からリビングに移動し、テレビをつけてニュース番組を探して見ると、目を覆いたくなるような悲惨な状況を信じる以外何も出来なかった。私達はお互いに家族にメールを送ったが結局その日に返事はこなかった。
次の日、私達の家族はみんな無事だとわかり本当に安心した。そして、出発日が数日遅かったら、私もテレビに映っていたあの場所に居たのかと思うと恐怖で、私がいかにラッキーだったかを実感した。

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