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脚本に嫉妬するくらい面白い『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』/映画感想

Netflix映画『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』を観た感想を綴りたい。

率直な感想、、

「こんなストーリーを作り出すなんてずるい!!」

巧妙すぎる脚本に思わず嫉妬してしまった。

もちろん私は脚本家ではないし、脚本家を志している者でもなんでもない。

しかし、なぜだろう。本作は面白すぎてなぜだか嫉妬の感情が沸いて仕方なかった。

こんな感覚ははじめてだった。また、鑑賞前と後でこんなにも印象が変わる作品も久しぶりな気もした。

Netflixで作品選びをする際に参考にするのが作品ページの紹介文だが、本作にはこんな文章が記されていた。

美しい島。悪人集団。名探偵。タマネギの皮をむくように、少しずつ核心に近づいていく殺人ミステリーを、“二度観ても初めて観たときと同じくらい楽しめる”とBBCが称賛。
Netflix映画『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』作品ページより

タ、、タマネギの皮をむくように、少しずつ核心に近づいていく殺人ミステリー⁇

この一文が妙にひっかかった。
なぜなら少しカッコ悪いと思ってしまったから(ゴメンナサイ)。

ただ“二度観ても初めて観たときと同じくらい楽しめる”とBBCが称賛しているよう。

うむ、ならば観てみよう。

前半で感じたのは「金田一少年の事件簿」のような「名探偵コナン」のような、孤島に集結した登場人物全員が容疑者的な展開。

個性強めのキャラクターたちには三谷幸喜作品のような賑やかさがあり、話が進んでいきながら「うむうむ。そういうパターンね」と、王道サスペンスの既視感を探してしまった。

しかし、とある瞬間からその “既視感探し” はピタリと止んだ。

思わず「パイナップル…」と口にしてしまった瞬間、うわあぁ…私はもうこの作品の虜になっている。。と気付いた。

まだまだどんでん返しの前なのに急に裏切られた感覚に陥り、それはある種快感と興奮さえ覚えた。

面白いことがはじまる予感にワクワクとドキドキ。裏切られた。実に嬉しい裏切りだった。

ミステリー作品の醍醐味といえば犯人予想(=推理)だが、本作で繰り広げられる鮮やかな伏線回収には、観客に推理させる隙を与えない感じがした。

タマネギの皮をむくように、核心についていく。
なるほど、この言葉は間違いではなかった。

そして面白いのが、そのタマネギはガラスでできているところ。

真実や正義を知ってしまった途端に一瞬にして割れてしまう。

見た目は美しくも、実は脆くて一瞬のうちになくなってしまう、世にも珍しいグラス・オニオンなのだ。

終盤の怒涛の畳み掛けには、ミステリー作品とはまた違ったドラマチックさがあり痛快。

観た人なら誰しも「推理体制」から一変して「応援体制」にシフトするに違いない。

本作は、2019年公開の映画『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』の続編だが、過去作品を見ていなくてもとても楽しめた。

私が斜に構えてしまったもうひとつの理由には、主演ダニエル・クレイグの存在があった。

どうも私はジェームズ・ボンドの印象が強く、その他の作品に今まで巡り会えていなかったのだが、本編を観てさすがだと思った。

飄々としていながらも重厚感のあるキャラクターをさらりと演じていた姿がとてもカッコ良く、また、彼の新しいキャラクター(名探偵ブノワ・ブラン)に出会えたのが嬉しかった。

ちなみに前作では、この名探偵役でゴールデン・グローブ賞主演男優賞候補にノミネートされたそう。

ギリシャの孤島に浮かぶ豪邸は羨むほど美しい。
画面に収められたパキッとした色合いはアートのようで、絵に描いたようなバカンス雰囲気も心地よい。また、有名人たちのちょいネタなどもクスリと笑えた。

笑えて痛快。脚本に嫉妬するくらい面白い『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』。

私を嫉妬させた脚本家は、ライアン・ジョンソン氏。

『LOOPER/ルーパー』(2012)、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)、『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)などが代表作に挙げられる。

私にとって、新年2本目となる映画鑑賞。

今年も刺激的な映画をたくさん観よう、そう思わせてくれた作品だった。

まだ未鑑賞の方はぜひ。オススメです!


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