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高校生の私へ。ミステリのハマり方「書く習慣」DAY15

ゼミに入りたての頃、教授に聞いたことがある。
「一番おすすめの本てなんですか」
そのとき先生はその質問ほど困るものはないと言っていた。

今ならわかる。
私のおもしろい本は、私のおすすめの本にはならない。
そもそも一番「おもしろい」なんて決められない。
どれも違った面白さがあるのだから。

それに勧める相手にも拠る。

以上を踏まえて、今日のお題「誰かにオススメしたい本・映画・アニメ・ドラマ」について、まだミステリにはまる前の私へ宛てて書こうと思う。

高校卒業後の私へ


文学部入学おめでとう。
ところでミステリは好き?

あまり好きじゃないの?
その気持ちはわかるよ。ミステリの歴史は海外文学が長いものね。
翻訳した本てなんだか文章が回りくどいというのには同意する。

それにミステリはトリックありきというのも苦手の理由なのかもね。
心情の表現とか微妙なニュアンスを描くような、長らく日本の主流であり純文学と呼ばれた本とは目指すところが違う気がするものね。

でもどんなジャンルでも、どんな界隈でもそれなりに歴史があって、異文化とまじりあったものっていうのは、やっぱり何かしら面白いものはあるものだ。あなたはそれをよくわかっている。
まあ、食わず嫌いをせずに、まずはこれを読んでみてほしい。

まずはここから「十角館の殺人」


日本の作家なら、日本の文学ばかり読んできたあなたには読みやすいと思う。
これはアニメやマンガや映像化してしまうとなかなか難しい、書くことでできるトリックだ。逆に、書くことの表現の幅を広げた作でもあると思う。
この作品以降、「another」とか「女王はかえらない」とか叙述トリックの名作がいくつも出てきた。
私はこの作品が起点になっていると思う。

まずは純粋に作品のおもしろさにふれてみてほしい。



この作品をおもしろいと思ったら、次に読むべきはアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」。
アガサ・クリスティ。名前は聞いたことがあるでしょう。「ミステリイの女王」と呼ばれる、イギリスの推理作家である。映画化された作品もある。
まだ見ていない?良く覚えていない?もう幸運としか言いようがない!

有名なだけにどうしたってネタバレが先行してしまうこの作家の本を、これからイチから読めるそんな幸せ。読もう。



そして読んだらわかる。実は、「十角館の殺人」は「そして誰もいなくなった」を踏襲して作られている。

実際、ミステリの世界では、作家たちが全知能を振り絞って新しいトリックを考えてはいるが、実現可能で証拠を残さないトリックを発明するのはなかなか難しい。トリックは使いまわされることもある。

なーんだ、パクリかなんて思わないでほしい。
そこがおもしろいんじゃないか!
こんなの、作家同士の共同開発としか言いようがない。
時代や世界を超えて、名作だからこそオマージュされ、引用され、踏襲される。
殺人事件が起きる、謎解きする。ストーリーの説明なんてしたらこれで終わってしまう。
その一言で言い尽くせないから小説が書かれるのだ。
決まったストーリー、出し尽くされたと思わるトリック、でも毎年新しい作品はどんどん出てくる。

思わず語ってしまった。
あなた、こういうの好きでしょ?絶対はまるから読んでみよう。

これを読んだら一度アガサクリスティの世界に浸ってみよう。
有名どころは「オリエント急行の殺人」「アクロイド殺し」「ABC殺人事件」。どれも典型にして異端。正統派伝統的推理小説でありながら、すべてがユニークで新鮮だ。
ここまで読んだらもう、ミステリ小説の沼に浸っているはずだ。
自然と次に読みたい本が出てくるだろう。

ハードボイルドの系列


そうそう、あなたは村上春樹が好きだった。
村上春樹は実は翻訳家としてキャリアをスタートさせた作家でもある。いろいろな作家を翻訳しているけれど、春樹自身が特に好きで、影響を受けたという作家はレイモンド・チャンドラーの他にいないだろう。

最初に出版された「ロング・グッドバイ」はなかなか分厚くて抵抗はあるかもしれない。
でも、村上春樹の作品の独特な世界観との共通点があることに気づくだろう。

例えば、村上春樹作品の主人公たちは、いつも渦中の中心にいながらどこかよそ事みたいな態度をとっている。
そのスタンスはまさにチャンドラー作品の私立探偵さながらだ。
中心にいながら、決して当事者ではない。
巻き込まれただけなのだが、それでもどこかに自ら関わっていく主体性がある。
そんなすかしたハードボイルドもいい。

おわりに


後のお題を見ずに書いているので往々にしてお題かぶりがある。
おすすめの本やアニメの話はもういろいろ書いたんだけどなあ。
まだまだ全然かけますが!

「書くこと」ってこういう感じでいいのかなあ。
最近同じようなテンション、表現だなあと感じてきている。
自分のクセみたいなものがみえてきた。
「書くこと」の上達にはうまい人の文体をまねすること、と聞いた。

小説で好きな人はいくらでもいるけど、エッセイで目標となる人見つけたいなあ。
まずはたくさん触れてみるところから。

おやすみなさい


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