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車窓から。

「いつだって世界を彩るのは個人の趣味と、好きという気持ちだ。」

星野源さんのエッセイ集「いのちの車窓から」に出てくる言葉である。

これは彼が、ドラマに出て、作曲し、歌を歌い、文章を綴る日々を過ごす中で出会った好きな人、日常を彩った出逢い、出来事、それらを丁寧に描いている一冊である。

自分も体験したことがありそうな出来事の描写が出てくることがあるが、この彼だからこそ書ける静謐な文章についつい引き込まれる。この出来事でこんな文章が書けるのか、と彼の日々の解像度の高さに、思わず唸った。

冒頭のフレーズも深夜の立ち食い蕎麦屋で出逢った店員の話から紡ぎ出したフレーズなのだが、その彼の感性の繊細さに痺れた。たまたま出会った蕎麦屋の店員の個人の趣味・好きなことに意識を巡らせられる、彼の意識に脱帽だった。

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今月の雑誌 &Premium は言葉の力について特集を組んでいる。色んな方々の心に響いた言葉の数々が載っていて、とてもとても素敵で思わず買ってしまった。

これをぱらぱらと眺めるたびに、言葉が好きになって良かったな〜と思う。

昔は読書家でもなんでもなくて、年に1冊も本を読まないことはザラだった。それがなんでこんなに言葉を好きになれたのだろうと反芻してみると、自分と他者が関係しているように思う。

他者との関係により、自分の心が振り回されまくって、それに疲れて本を読み始めた。どこかの誰かが書いた言葉が、いつかの自分の苦しみを言語化してくれて、言葉を取り入れるたびにすっきりする自分がいた。もう虜になった。

今まで、教科書などを通して言葉には触れていたが、そこには「正しさ」しかなかった。それでも、読んでいた本の中には、正しさも間違えもない、グレーな世界が広がっていた。こんなに揺れる毎日でもいいのだ、そう思える作品ばかりだった。

わたしは言葉を通して、自分のことをもっともっと好きになった。

それと同時に、何故この作者はそんな言葉を発せるに至ったのか?響いた言葉を扉に、相手の奥へ奥へ足を進めたくなった。そうして同じ作者の本も次第に読み進めるようになった。

言葉は自分を好きになる一歩でもあり、誰かの人生を自分の車窓から見る鍵でもあった。

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わたしの書く文章には今のところ、自分の話がとても多い。自分の心がいつ、どう動き、それはなぜ動いたのか?そう考えることが、文章を書くきっかけになっているところがある。

けれど、これからは、星野源さんのように自分の車窓から見た世界のこと、他者のことを書けるようになりたいと思った。出会った彼らが愛するもののこと、出会った彼らによって好きな瞬間が生まれたこと。そんな文章を書けたら、きっと私の毎日はもっともっと楽しくなりそうだとワクワクした。

急には書けるようにはならないだろうけれど、車窓から景色を繊細をみる意識を持つこと、そう、この本から教えてもらった気がした。


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