「ただしい人類滅亡計画」が面白かった
この本すごく面白かったです。
内容紹介
作者はオモコロライターのダ・ヴィンチ・恐山氏。
テーマは「反出生主義」という、近年注目を集める(一見過激な)思想。
議論する10人のキャラクターはこんな感じ。
人類は滅亡すべきなのかすべきでないのか、反出生主義者のブラックの主張を軸に、様々な角度から擁護と反論が投げかけられます。
なんか小難しそうな本に思えますが、全然そんなことないです。
哲学的なテーマを描きながらも言葉遣いはとても易しいし、シリアスな議論内容の中にもいくらかのコミカルさが含まれていて、読むハードルはけっこう低いです。
私個人としては、反出生主義についてはアベプラの特集で知っていて、興味深い思想だと思っていました。
そして、「反出生主義」は「出生主義」よりも論理的な思想ではないかと、ぼんやりと感じていました。
そんな中でこの本を手に取ったこともあり、興味津々でどんどん読み進めていけました。
この本の魅力
この本の魅力は、普通の小説や自己啓発本やビジネス書とはちょっと違っていて、「新しい考え方に出会う」ところにあると思います。
「人類の存続/滅亡」という超デカいテーマに対して、どういう立場の人間がどういう意見を言うのか、そしてその意見はどういう思想に基づいて発せられているのか。
この「思想→意見→議論」のプロセスがとっても分かりやすく描かれていて、自分とは違う考えを持つキャラクターの思想がスッと入ってくるんですよね。
本を読んでいく内に、知的興奮のある非常に良質なディスカッションを聴いている感覚になってきます。
たぶん、議論や思考実験が好きな人には刺さると思います。(私は刺さりました。)
議論しているだけなのに
何より、キャラクターが議論しているだけなのに、物語としての山場やオチがしっかり成立しているのが本当にお見事。
この本はサスペンスでも推理ものでもありませんが、十二人の怒れる男やキサラギに近い魅力を感じました。
例えば、終盤にあるキャラクターが反出生主義に対してクリティカルな反論を述べ始めるシーンがあるんですけど、これが不思議なくらい心を掴まれてしまうんですよね。
物語の中盤くらいまでは反出生主義に気持ちが傾きつつあったのに、あるキャラクターの反論も痛快に感じてしまう。
「うわーそんな考え方もあるのかよ!」という悔しいような嬉しいような、変な感情になっちゃいました。
とにかく、オススメです。
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