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ワクチン接種の理想と現実

この記事では世界小動物獣医師会(WASAVA)が示すガイドラインに沿って、高リスク猫と低リスク猫に分けてワクチンプログラムをまとめています。なんと、日本語版があります。

https://wsava.org/wp-content/uploads/2020/01/WSAVA-vaccination-guidelines-2015-Japanese.pdf

ワクチンの接種頻度にかかわるリスク分類についてはこちらの記事で触れました。

https://note.com/ysnc/n/nd8a2a3faaf1f

推奨接種頻度をまとめるとこんな感じです。

高リスク猫

パルボ→3年おき
ヘルペス→毎年
カリシ→毎年
エイズ→毎年
白血病→2〜3年おき
クラミジア→毎年

低リスク猫

パルボ→3年おき
ヘルペス→3年おき
カリシ→3年おき
エイズ→不要
白血病→不要
クラミジア→不要

そして、日本で販売されているワクチンは以下のとおりです。

お気づきかと思いますが、毎年打つべきワクチンと、数年に1回で十分なワクチンがひとつのワクチンに混合にされています。

例えば、単体のパルボワクチンは存在しません。結果的に高リスク猫の3種混合ワクチンは毎年接種が推奨されることになります。
クラミジアは毎年予防したい場合、5種混合ワクチンを選択することになり、毎年は接種は不要なはずの白血病ワクチンも同時に接種する必要があります。

なぜこのようなギャップが生まれてしまうのでしょうか。

それは、ワクチンの製造コスト(費用と時間)の問題だと思います。ここからはあくまで私の予想も含まれますので、事実と異なる可能性があることを先に謝っておきます。

ガイドラインにあわせてワクチンを組み替えることは、単に組み換えるというより作り直すという方が近い作業になると思います。
ABCの3種混合ワクチンは、単にAとBとCを足せばOKではありません。組み合わせることによって生まれる弊害をチェックし、直して、治験して、商品化しているはずです。
コーラもメントスも好きな人が、どっちも一緒に飲んだらひどいことになるのは想像できますよね。メントスコーラはあまりにも有名ですが、それがわからないのが新薬開発です(新しいワクチンを開発ではないから新薬というのは不適切かもしれませんが)。メントスを口で溶かしてからコーラを飲めばある程度大丈夫。

これを薬で証明しなければならないのです。そのため費用も時間もかかります。医療は日進月歩です。コストをかけて開発して流通した頃にガイドラインが変わっているなんてことはザラにあります。
実際、このWASAVAのワクチネーションガイドラインも2015年の改定で猫エイズウイルスワクチンを非推奨からノンコアワクチンに変更しています。勿論、標準医療やガイドラインにできるだけ合わせた薬やワクチン開発は必要ですし、製薬会社も努力しています。しかしご存知のとおり新薬は高価です。毎年必要なワクチンに今の何倍もの値段を払えますか?やはりそれは現実的ではありません。一部の人は払えるかもしれません。しかしワクチンの特性上、多くの猫が打つ必要があります。全体の10%だけ打っていても感染症防除としては意味がないのです。

結論

低リスク猫ではない限り、3種でも5種でも毎年接種を推奨します。
毎年は必要ない種も入ってしまいますが、比較的副反応の少ない猫であるため、必要以上にワクチンを恐れず、感染症を予防しましょう。


やまがた不妊去勢クリニックでは、猫を保護している個人や愛護団体、福祉事業者を対象に多頭飼育や野良猫について助言、動物医療提供を行っています。下記より問い合わせください。
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