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手紙

週末、手紙を書いた。 どこにいてもリアルタイムでつながれる時代に、その中でも特によく連絡をとる友人に向けて、手紙を出した。

小学生の時の趣味が「手紙」だった。と言っても特に手紙を出す相手がいたわけでもなく、レターセットとか切手とか、手紙にまつわる品々を集めて悦に入っていた。
きっかけは木下綾乃さんの著書を読んだこと。海外の郵便局で買ったエアメールのレターセット、オーダーメイドのシーリングスタンプ、旅先から出す手紙の消印。取り上げられる全てが一等美しいものに思えて、誕生日やクリスマスの度に端からねだったものだ。
数ある「手紙活動」の中でも特に夢中になったのは古い切手を集めること。
切手の貼られた部分をハサミで切り出して、水につける。剥がれてきた切手をティッシュなどで丁寧に拭いて乾かす。切手収集専用のノートがあって、薄い紙の仕切りに自分なりのルールで並べていく。たまに眺めて並びを変えてまた眺めるのが、何より楽しい時間だった。

木下綾乃さんに一度手紙を書いたことがある。
本を読んで気になったこと、これはどこで買いましたか? これのオススメはありますか? と、今思えばだいぶ不躾な内容だった気もするが、当時の手持ちの中でも一張羅の便箋に丁寧に文字を書いて、いちばん可愛いと思うテープで封をした。切手は郵便局の本局に行って、取り扱ってる全ての中から封筒にいちばん合うものを選んだ。
少し経って、丁寧なお返事をいただいた。本にも載ってた素敵な封筒と宛名シール、便箋は初めて見るもの。もったいなさすぎてあまり触らないようにしているが、今でも大切に保管してある。

わたしの「手紙活動」を披露する場はあまりなかったけど、それでも小学生の頃はメモを折りたたんだ簡易的な手紙を毎日のようにやりとりしていたし、年賀状だってクラスのだいたいの子と交換してた。でも中学、高校と成長するにつれめっきり手紙を書かなくなって、もらわなくなって、だんだんと「手紙」から離れてしまっていた。
数年前のある日、友人がちょっとしたプレゼントを手紙で送ってきてくれた。1人暮らしのこの家に届く郵便物といえば公共料金の払込書かチラシか、DMか。その中で久しく"わたし"宛てに届いたその手紙の封を開けた時、「手紙」という行為への思いが一気に蘇ってきた。

手紙には、思いと時間とトキメキが詰まっている。

それ以来、何かと機会を見つけては手紙を送るようにしている。
憧れの木下さんにはまだまだ遠く及ばないけど、封筒、便箋、切手、とバランスを考えてコーディネートできるようになったと思う。
今回の手紙は紅茶のティーパックのおすそ分け。お店の人が買った紅茶を包んでくれた可愛い紙袋を開いて封筒に仕立て直し、便箋はシンプルな白。春の花が描かれた切手を貼って、ポストへ。
すこし離れたあの子の元に、春が届きますように。

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