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おもてなされること

普段前もって予定を立てる彼女にしてはめずらしく、前日の夜に「明日遊びに来ない?」と連絡があった。日中予定のあったわたしは「夕方からなら、ぜひ。」と返事をし、夕飯時にお家にお邪魔することになった。

デパ地下でなにかお惣菜を買っていくね、と伝えて食べものの調達に向かう。彼女とは学生時代からもう何度も食事を共にしているので、互いの好みそうなものはだいたいわかる。美味しそうなあれこれを持って電車を降りたら、ちょうど迎えに来てくれた彼女と落ち合うことができた。

最近1人暮らしを始めたばかりの彼女の部屋に上がる。引っ越してすぐに一度遊びに来た時と比べると家具や小物が増え、すっかり落ち着く空間になっていた。
映画を見ながら食事をして、ひとごこちついていると、「お腹に余裕があれば」と照れくさそうにケーキとあたたかいお茶を運んできてくれた。

家のこと、特に料理は苦手だと常々言っていた彼女は1人暮らしを機に日々の食事やお弁当を作るようになり、失敗することも少なくはないけれどとても楽しいと、よく話してくれていた。
そんな彼女の作ってくれたーー恐らくはじめてのーーケーキは、りんごの甘さとホットケーキミックスの懐かしい味がじんわり心に沁みるおいしさだった。

1人暮らしの穏やかな休日をわたしと過ごしたいと思って、そのために時間を使って準備してくれたのかと考えたら、これ以上ないくらいうれしい気持ちで胸がいっぱいになった。

最高の"おもてなし"を受けたぽかぽかした心地で、足取り軽く家路に着いた。

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