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「アナザーパスを有する建築-神奈川県足柄下郡真鶴町を対象として-」 修士設計①

プロローグ


本投稿の議題は私の修士設計「アナザーパスを有する建築-神奈川県足柄下郡真鶴街を対象として-」の導入である。
私としては、修士設計テーマに至るまで、修士設計の学外に出したことで考えたこと、現在考えることに繋がっていることなど書きたいのだが、それにはまず内容を知ってもらう必要がある。
そこでまずは、「アナザーパスとはなんぞや」ということで導入と可能性について書こうという話である。
それでは議題に入ろう。

※本提案はありがたいことに、トウコレ2022・JIA関東2022・レモン画翠展2022にて展示・発表させていただく機会があった。なので図案など提案が気になる方は下記URLより検索いただくか本を見ていただきたい。
・トウコレ2022

・JIA関東2022

・レモン画翠2022

https://lemongasui.co.jp/2022/10/11/lemonexb-45matome/

はじめに


世の中には、常に通れるわけでないが、特定の出来事により出現し街を地続きにする空間がある。私はそのような空間を「アナザーパス」とし
修士設計を進めた。

アナザーパス


例えば、千畳敷のように潮の満ち引きによって通ることができる空間がある。その空間は島と陸を繋いだり、干潟となることで街の観光資源となっている。また、建築も有することがある。例えば、雑貨店やカフェのように店舗の開閉に伴い、街の歩行環境の一部として佇んでいる。
このようにアナザーパスには、時間や場所の制限ゆえの魅力があり、既存動線や地域資源に付随することで新しい地域構造や場所性を作り出している。

アナザーパスを有する建築の提案


私は建築がアナザーパスを有する時、有するためのデザインが形態に影響しているが、有する建築の用途や機能・公私の領域・アナザーパスを出現させる空間形態や出来事は画一的ではないかと考えた。
そこで本計画では、神奈川県足柄下郡真鶴町を対象としアナザーパスを有した建築を提案することで、その構成要素や設計手法を掲示し、有する場合の空間可能性や地域構造のあり方について追求する。

アナザーパス構成の仮説


まず、本計画の調査や設計の着眼点を得るため、アナザーパスとなる空間を無作為に12つ選出し、パスの現れ方や立地状況などを観察した。
そこからアナザーパスの特徴や構成を下記のように仮説を立てた。

[特徴]
・付随したものの価値を変える
・独自の空間体験や活動が連続する
・移動空間だが、移動以外の機能がある
・通れるための制約(活動などによる時限的な変化)
・通れない時もある

[構成]
◯「出来事+形」によるパスの現れ
千畳敷は潮の満ち引きで現れるが、干潮の際に通行可能となる形の砂浜や岩場が存在していることが重要になる。
そこで、本計画では時限的な変化をもたらす「出来事」と出来事によって通行可能性を作る「形」の組みわせ、つまり「出来事+形」がアナザーパスでは重要と考える。
・「出来事」の場所性と汎用性
出来事にはその場所でしか起こらないこと(千畳敷でいう沿岸部)や地域らではのよく見られることのように場所性があるものと、店舗の開閉のようにどこにでも見られるような汎用性のあるものがある。
・「出来事」のスパン
空間や出来事によりアナザーパスの出現頻度は異なる可能性がある。
千畳敷のように時・日で変化するものや祭事どきにのみ使用される空間のように年で変化するもののようにスパンに多様性があると考えられる。

◯地域に対し機能する立地
・通行環境として選択肢を与える
ex)並行する道に敷地が挟まれる
ex)一つの道に対し分岐し合流する
・動線を補完する
ex)目的地に敷地が隣接しており、目的地にはその敷地を通る必要がある場合ex)街スケールで見た時に建築がフットパスの補完になり得る時

まとめ(アナザーパスの可能性)


※提案を見てから読んでいただくのが良いかもしれない。
・建築計画に対して
アナザーパスを有するための工夫(公私の領域など)や、出来事をアナザーパスを出現させる出来事として扱う空間構成や形態は新しい建築計画の可能性に繋がるのではないか
・地域構造に対して
何気ない街路や突き当たりが辻が発生する場となったり、建築の中も巻き込んだ変化で連続する活動や体験を作り出したりして、時限的に多様な構造を持てるのではないか
(インフラの道路の構造とはまた違う新しいアナザーパス構造的な)
・建築と地域の関係性について
建築は時限的な開き方で地域にリズムを、地域は場所性や文化を、互いに反映し合う関係性が生まれ、ポテンシャルを生かした新しい地域性を作り出す。
また、まち開きの別の在り方としてあり得るのではないか。(通ることができる時最大限開くという形になり開き方にもグラデーションが生まれるのではにないか)

エピローグ


本計画は以上のことを用い真鶴町にて調査を行い、2エリアにて計6つの建築を提案した。提案があるがゆえ、文章ではわかりづらいのでまずは導入と可能性を書かせていただいた。残りは調査と提案の2部構成でいきたい…。
聞きたいことや議論したいことなどあればご連絡いただけると幸いである。(これを書いている時も療養で休職中ゆえ、いつでもウェルカムである)
ここまで読んでいただき感謝する。ではまた次回。



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