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笠井爾示という写真家

 東京から戻る新幹線を待つ間、少し時間があったので銀座の蔦屋書店に立ち寄った。蔦屋書店はいちばん好きな本屋で、普通の本屋ではまず目にすることができないマニアックな本も取り扱っているし、何よりお店の雰囲気が良い。特に写真集の取り揃えは豊富で、中身を見られるようになっているものも多いので嬉しい。

 時間潰しのつもりで入ったので、特に目当ての本などはなかったのだけれど、たまたま通りがかった棚に笠井爾示(かさい ちかし)さんという写真家の写真集が平積みされていた。
 『東京の恋人』というタイトルのその写真集の表紙には、胸元を大きくはだけこちらにむかって笑いかけている女性が写っていた。なんとなしに手に取りパラパラとめくってみると、上半身が露わになった女性や、きわどいポーズをとった女性たちがたくさん写っている。立ち読みしていた僕はだんだんと人目が気になりだして、その写真集をいったん棚に戻して立ち去った。写真に写っていた女性は、みな綺麗な人たちばかりだった。

 その後、他の写真集や雑誌などを立ち読みしていたのだけど、だんだんとさっき読んだ『東京の恋人』が気になりだしてきた。エロス満載の写真集ではあったものの、決して下品ではなく、妖美で、どことなく退廃的だった。

 実は自分にも、いつかヌードを撮ってみたいという密かな願望がある(あまり公にすると気持ち悪いので周りには言っていないけれど)。笠井さんの撮る女性の写真は、自分が「こういう風に女性を撮れたらな」という理想にとても近かった。僕はその写真集をもういちど手に取り、さっきよりも時間をかけて眺めた。

 笠井爾示さんという写真家はまったく知らなかったので、ウェブで調べてみると最近のインタビュー記事が出てきた。Instagramでも写真を公開されていて、速攻でフォローした。

リンク:INTERVIEW:笠井爾示 〜写真家による“東京の恋人”〜(前編)
リンク:INTERVIEW:笠井爾示 〜写真家による“東京の恋人”〜(後編)

 当たり前の話だけれど、自分の知らない写真家なんてのは山ほどいて、しかもそういった人たちの存在をすべて知ることはできない。でも、その中には確実に自分の理想とする作品を撮り続けている人たちがいる。少しでもそういった人たちの存在を知り、彼ら彼女らの作品に触れられればと思う。

『東京の恋人』| Amazon

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